【相模原】株の相続と遺留分を家族信託で解決
Q:株を譲りたいが遺留分が心配な(相模原市)Oさんからのご相談例
わたしは、規模は小さいですが株式会社を経営しております。
家族は、数年前に妻を亡くしましたが、こどもがふたりいます。
現在はわたしの会社に勤務している息子夫婦の家で同居しており、都内に嫁いだ娘は、家業とは関わることなく生活してきました。
そろそろ息子に後継者として引き継いでいこうと、業務を任せることも増えてきたので、今後のことを検討することにしました。
わたしが亡くなったときは、人事のこともあるので、会社の株はすべて息子に譲りたいと考えています。
しかし、わたしには経営している会社の株以外、残せるような財産がありません。
妻の闘病が長かったため、預貯金のほとんどを入院費や介護費などに充てたため、残せるような現金がそれほどありません。
そのため、会社の株を息子に譲った場合、娘から遺留分を請求されたときはどうすればいいか悩んでいます。
わたしの預貯金は少なく、息子はわたしと一緒に住めるように家を建ててくれたローンがあり、子どもも生まれたところなので遺留分を支払うことは難しいでしょう。
株を少し渡すことも考えたのですが、会社が小さいこともあり、経営や人事のことを考えると、できれば、会社に関わっていない娘に株を渡して経営権を分散させるようなことは避けたいと思っています。
娘の夫が同じ系統の職種についていることもあり、娘はそうでなくても、娘の夫が進んで経営に関わってきてなんらかの揉め事になるようなことが想定されるようなことは回避したいのです。
株を分散させることなく、遺留分について対策できるいい方法があれば教えてください。
A:家族信託による事業継承の遺留分対策
遺言などで株などの財産を息子さんだけに譲るとします。
そうすると、同じOさんのこどもなのに、息子さんはもらえて自分だけ遺産がもらえないのはおかしい!と娘さんは納得がいかず不満に思うかもしれません。
そうすると、[遺留分]という「最低限度の財産」を娘さんも受け取ることができる法律があるので、それを請求する権利があるのです。
娘さんに遺留分を請求されたとき、相続している息子さんは娘さんに対して、受け取った遺産を法律で決められた分を配分しなければいけません。
株だけ譲り受けていた場合は、その株の一部を譲渡することもできるのですが、株を分散させたくないならばそれ相応の現金を代わりにわたす必要があります。
息子さんが安心して経営していくために、株を売るつもりも手放すつもりもないならば、会社の規模によって金額の差がありますが、ある程度のお金が必要になるでしょう。
そうなると、息子さんは金銭的負担を生じ、会社の経営に支障をきたす可能性も出てきます。
ですから、会社を代替えするときには、遺留分についても事前に確認することがとても大切なのです。
株には二種類の機能があり、Oさんの心配されているような「人事権」=会社の人事に関する権限をもち経営判断する機能と、「受益権」=株の配当や売却による利益を得る権利というものがあります。
この機能をわけて考えることで、相続するひとが求めるかたちに整えることができるのが【家族信託】です。
息子さんが後継者として会社経営に関わっていくならば、この「人事権」は手放すことができない権利です。
人事権を掌握してない状態で社長に就任すると、いつ役職を下ろされるかわからない状態では安心することができないでしょうから、安定した経営を続けるには後継者が株を所有しているということがポイントとなります。
財産的価値があるのは、株の「受益権」の機能のほうです。
遺留分を請求された際に、こちらの「お金をもらえる権利の一部」を娘さんに譲り、収益を受け取れるようにします。
このように娘さんが遺留分相当の金額を受け取れるように設定すれば、株そのものを譲ることなく対応することができるのです。
家族信託を使った信託の内容としては、以下の通りです。
Oさんの所有する株を信託財産とし、信託契約を結びます。
財産を託したいと依頼する[委託者]がOさんです。
信託財産である株を託された[受託者]である息子さんが、株を管理して後継者として会社運営を行います。
株の売買や配当金などの収益を受け取る[受益者]は、信託設定時はOさんとして、Oさんが亡くなったあとは息子さんと娘さんが[受益者]となるように信託契約を定めましょう。
遺留分に対応するぐらいの収益を娘さんが受け取れるように設定すれば、遺留分減殺請求をされる可能性も少なくなります。
このように家族信託を用いることで、株を分配することを回避しつつ、息子さんは遺留分相当の多額な金銭を用意する必要もなく、遺留分に対応した事業継承をおこなうことができます。
遺留分のトラブルを防ぐことによって、姉弟間の関係が壊れることも防ぐことができます。
家族信託を活用して、遺留分にも対応しましょう。