家族信託

家族信託の8つのメリットと5つのデメリット

最終更新日 2022.05.30投稿日

家族信託のメリットとデメリット

生前の認知症対策や死後の財産管理処分の際に活用できる家族信託は、とても便利で徐々に認知度も高まっています。

ただし家族信託にはメリットだけではなくデメリットもあります。利用を検討する際には、リスクや限界も把握しておく必要があるでしょう。

今回は家族信託のメリットとデメリットを相模原・町田の司法書士が解説しますので、関心をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。

家族信託の8つのメリット

家族信託とは、信頼できる家族に不動産や預貯金などの財産を預けて、指定したとおりに管理処分してもらう契約です。以下でそのメリットをみていきましょう。

柔軟に財産管理できる

高齢になったときの財産管理方法としては、家族信託以外に「後見制度」があります。後見制度を利用する際には「家庭裁判所」による監督を受けなければなりません。後見人が自由に財産の管理処分をできるわけではなく、裁判所の許可がないとできない行為などもあり制約がかかります。また定期的に財産の内容や管理状況について、裁判所へ報告する必要もあります。

家族信託であれば、家庭裁判所の関与はないので受託者が柔軟に対応できる点がメリットです。定期的な報告も不要なので、受託者にかかる事務手続きの負担も軽くなります。

財産を預ける相手を指定できる

本人の認知症が進行してしまった後に第三者に財産管理を任せるには、成年後見制度(法定後見)するしかありません。
そうなったら、家庭裁判所が後見人を指定するので被後見人は自由に財産管理人を選べません。弁護士や司法書士などの第三者が選任され、本人のすべての財産を預けなければならない可能性もあります。
家族信託であれば委託者本人が信頼できる家族を選べるので安心ですし、よりご本人の希望に沿った財産管理を実現できるでしょう。

認知症になっても財産が凍結されない

家族信託契約を利用せずに認知症にかかってしまったら、本人が財産を動かせないので「凍結状態」となってしまう可能性があります。
たとえば不動産の売却もできず預貯金も引き出せないなど。そうなったら本人の生活にも支障が及び、周囲にも迷惑がかかるでしょう。
あらかじめ家族信託を設定しておけば、受託者が適切に管理できるので財産凍結のトラブルは発生しません。

相続争いを防止できる

人が死亡すると基本的に法定相続人が財産を承継し、遺産分割協議を行なう必要があります。その際法定相続人同士の意見が合わず、トラブルになるケースが多いので注意しなければなりません。
あらかじめ家族信託によって死後の財産処分管理方法や最終的な財産帰属先を指定しておけば、相続争いを避けやすくなります。特に遺産に不動産が含まれている場合、管理処分権を1人に集約しておけば共有状態になるトラブルを避けられるメリットもあります。

生前の財産管理から死後の財産処分まで連続した対応が可能

家族信託を利用しない場合、生前の財産管理に関しては後見制度、死後の財産処分や承継については遺言を用いる必要があります。
これらの制度は直接関連性のないものなので、死亡した時点でいったん財産管理体制が分断され、連続した対応ができません。

家族信託であれば生前の財産管理から死後の財産処分引き継ぎまで連続的に対応できるので、スムーズかつ柔軟に対応できます。

2世代以降の財産承継を指定できる

遺言書を利用しても、財産承継方法を指定できるのは自分の次の世代までです。
たとえば「長男に財産を引き継がせる」と遺言した場合でも、長男が誰に遺産を引き継がせるかは長男の意思次第。父親が決めることはできません。
家族信託を利用すると、まずは長男、その次は次男の子ども(孫)など、2世代以降の財産承継方法を指定できます。

委託者が破産しても財産が守られる

家族信託を利用しない場合、本人が破産すると財産は基本的に全て失われます。
一方で、家族信託を利用して預けていた財産については、たとえ本人が破産しても守られることになっています。これを「倒産隔離機能」といいます。
同様に受託者が破産しても信託財産に影響はありません。

さまざまなシーンに対応できる

家族信託の適用場面は非常に多彩です。
たとえば以下のような悩みごとには、すべて家族信託によって解決できる可能性があります。

  • 事業承継
  • 障害のある子どもの生活が心配
  • 子どもがいない夫婦の相続対策
  • 事実婚の夫婦の相続対策
  • 死後に遺されたペットが心配
  • 認知症に対する備え
  • 先祖第第伝わってきた土地を確実に次世代に伝えていきたい

相続や高齢になった後の財産管理についての心配事は家族信託で解決できる可能性が高いので、関心がありましたらぜひご相談ください。

家族信託の5つのデメリット

家族信託には以下のようなデメリットがあります。

身上監護権や取消権がない

「成年後見人」には本人の身上監護権が認められますし、本人が勝手に締結した契約などの取消権もあります。

しかし家族信託の受託者にはこういった権限がありません。認知症の親が不利な契約を締結させられても取り消しができず、本人を十分に保護できない可能性があります。

家族間で意見対立する可能性がある

家族信託を設定するとき、親族間で十分に話し合わないと利害関係人の間で意見対立してしまうケースがあるので注意しましょう。

たとえば家族信託で不動産を委託すると、不動産の名義は受託者へ移転します。その際、受託者以外の推定相続人が不満を持つかもしれません。
1人の子どもを受益者とすれば別の子どもが「不公平」と感じて反対するケースあるでしょう。
最終的な財産帰属先を長男の子ども(孫)にすると、次男や次男の子ども(孫)が納得せずトラブルを起こす可能性もあります。

家族信託契約を利用する際には、親族全員でよく話し合い、納得できる方法で最終的な契約を締結しましょう。

贈与税、相続税がかかる可能性がある

家族信託を設定して財産を受託者へ預けると、その時点で「贈与税」が発生する可能性があります。委託者以外の人を受益者とした場合、受益者へ財産が移転したとみなされるためです。
委託者を受益者とした場合でも、委託者が死亡して受益者の地位が移転すると「相続税」がかかります。

思わぬ税金が発生して困惑しないように、家族信託契約を締結する前には税理士に相談して税額のシミュレーションをしておきましょう。

税務申告の手間がかかる

信託財産から年間3万円以上の収入を得られたら、次年度の1月31日までに「信託計算書・信託計算書合計表」という書類を税務署に提出する必要があります。

また信託財産から不動産所得が発生する場合、確定申告の際に「不動産所得用の明細書」だけではなく「信託財産に関する明細書」という別の書類も作成しなければなりません。
このように、家族信託を利用すると税務申告の手間が増大する可能性があります。
自分で対応するのが難しければ、税理士に依頼しましょう。

専門家に依頼すると費用がかかる

家族信託を利用する場合、受託者は家族なので受託者へ費用を払う必要はないケースが多数です。
一方で、家族信託の契約を設定するために専門家に依頼する必要はあるでしょう。家族信託の法的スキームは複雑であり、素人ではうまく契約書の作成や登記などに対応できないケースが多いためです。

専門家に依頼すると、信託財産の価額に応じた報酬が発生します。また公正証書を作成する費用や登記費用なども必要になる可能性があります。

家族信託を利用する際には、あらかじめ何にどの程度の費用がかかるのかシミュレーションしておくべきといえるでしょう。

家族信託のメリットもデメリットも知り尽くした専門家へご相談を

家族信託にはメリットとデメリットがありますが、うまく利用すればメリットを大きく活かすことが可能です。ただし十分にメリット活かすには、家族信託に長けた専門家を選定する必要があるでしょう。
当事務所は相模原・町田の地域を中心に相続コンシェルジュとして活動を続けてきた実績がございます。家族信託に関心のある方はお気軽にご相談ください。