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よくある質問
家族信託
家族信託Q&A よくある誤解へ専門家が回答
認知症になったときの備えや相続対策として近年、注目を集めている家族信託。 ただまだまだ一般に浸透しているとはいいにくく、誤解されているケースが少なくありません。 今回は家族信託についてのQ&Aとして、よくある疑問にお答えしていきます。 家族信託を使った財産管理に関心をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。 Q1 認知症になったら家族信託を利用できませんか? A 確かに認知症が進行すると家族信託を利用できなくなる可能性があります。ただし利用できるケースもあるので、一度専門家に相談してみるようお勧めします。 家族信託は信託契約という一種の「契約」です。 委託者と受託者の両方に意思能力がなければ契約を締結できません。委託者が認知症にかかり重症化してしまったら意思能力が失われるので、有効な信託契約を締結できなくなってしまう可能性があります。 ただ「認知症」といっても、症状の程度には個人差があります。 初期の段階で意識が清明であれば、信託契約を締結できるでしょう。 一方で成年後見人をつけなければならないほどに認知症が進行していたら、もはや信託契約を締結できません。 認知症になっても家族信託を利用できるケースはたくさんありますが、進行してしまったら手遅れになります。関心をお持ちであれば、早めに専門家にご相談されるようお勧めします。 Q2 家族信託にはどのくらいの費用と時間がかかりますか? A 費用は信託される財産の価額や種類、数量などによっても異なってきます。 各ご家庭のご予算に応じてプランを設定させていただくことも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。ご相談は無料ですので、まずは一度詳細をお伺いできましたら幸いです。 家族信託の設定にかかる時間については、当初のご相談から家族信託設定完了まで約3~4ヶ月程度となるケースが多数となっています。ただし案件が複雑な場合など、より長期の時間がかかる可能性もあります。 Q3 家族信託を利用すべきか、判断基準はありますか? A 高齢になったときの財産管理や死後の相続対策に不安を抱えている状況であれば、一度家族信託の利用を検討してみるようお勧めします。 例をあげると以下のようなケースでは、家族信託について検討する価値があると考えられます。 親御さんに認知症の予兆が出ている 自分の将来、認知症になったときの財産管理が心配 夫婦のみで子どもがいない 「長男の次に次男の子ども(孫)へ財産を相続させたい」など、2代以上先の世代まで財産相続方法を指定したい 障害のある子どものため、親の死後も将来にわたって財産を適切な方法で管理し続けてもらいたい 投資用のアパートやマンションを保有をしているが、認知症になった後も適切な方法で経営を続けてほしい 不動産を所有していて、複数の相続人が相続する予定になっている Q4 通常一般の「相続」と「家族信託」の違いは何でしょうか? A 「相続」は、基本的に法定相続人が法定相続分通りに遺産を受け継ぐ制度です。 被相続人が財産の承継方法を指定することはできませんし、遺産相続トラブルが発生するリスクも高くなります。遺言書を作成すれば次の世代までの相続方法は指定できますが、その先の世代への相続方法までは指定できません。 「家族信託」を利用すれば、委託者が希望する通りに財産を引き継がせられますし、管理や処分の具体的な方法まで指定できます。生前の財産管理方法も合わせて決められるメリットもあります。 「自分の希望通りに財産管理をしてもらい、希望する人に財産を引き継がせたい」なら、単純な相続よりも家族信託を利用するのがよいでしょう。 Q5 子どもなどの親族に財産を預けた場合、受託者が委託者の意に反する行動をするリスクはないのですか? A リスクがないわけではありませんが、不正を防ぐ方法はあります。 家族信託における「受託者」の権限は、信託契約によって限定できます。財産の管理処分方法を当初の信託契約によって定めておけば、勝手な行動はできません。 受託者が物件を売却して得たお金や収益物件の賃料を受益者に渡さないなど「信託契約に反する行為」をしたら、委託者や受益者は受託者へ損害賠償請求ができます。 また委託者と受益者が合意すれば、いつでも受託者を解任できますし、委託者の死亡後は受益者が裁判所へ申し立てれば、受託者を解任してもらえます。 信託監督人を選任する方法 「委託者が認知症になった後や死後には、誰が受託者を監督するのだろう?」と不安になるかもしれません。 基本的に受益者がいれば、受益者が受託者を監督します。それだけでは不安がある場合「信託監督人」を設定しておけば、信託監督人が受託者を監督するので安心できるでしょう。 信託監督人は受託者が権限外行為をしたり利益相反行為をしたりしたときに取消権を行使したり、受託者へ信託事務の処理状況に関して報告を求めたりできます。 Q6 受託者が個人的に多額の借金をした場合、信託財産が差し押さえられる可能性はありますか? A 受託者や委託者が借金をしても、信託財産は差し押さえ対象になりません。たとえ破産しても換価対象にならないので安心しましょう。 信託契約には「倒産隔離機能」があります。倒産隔離機能とは、信託財産は委託者や受託者の財産とは別個に管理されることです。 家族信託を設定すると財産は「受託者」の名義に変更されますが、受託者の所有物となるわけではありません。よって「受託者」の債権者は信託財産の差し押さえはできないのです。 同様にいったん信託された以上「委託者」の財産でもなくなるので、委託者が破産しても信託財産は守られます。 ただし受益者が借金したり破産したりすると、「受益権」が差押え対象になる可能性があります。「受益権」とは受益者が信託財産から利益を得る権利なので、差し押さえられると債権者が信託財産からの利益を得ることになり、受益者は権利を失ってしまいます。 以上、結論として受託者が借金をしても信託財産に対する影響はないので、その点は心配する必要がありません。 Q7 信託契約は公正証書にしなければならないのですか? A 法的には公正証書にしなければ無効というものではありませんが、基本的には法律家が介在する場合は公正証書にします。 なぜなら家族信託の信託契約は数十年以上も継続する可能性がありますし、親族間で信用性が争われてトラブルになるケースもあるからです。 公正証書にしておかないと、原本が失われて内容が守られなくなる可能性もありますし関係者から「信託契約書は無効」などと主張されて訴訟になってしまうリスクも高くなるでしょう。 将来にわたって確実に内容を実現し、残された家族が争わないようにするためには、公正証書にしておくようお勧めします。 Q8 家族信託は、委託者と受託者の2名だけで契約してしまってよいのでしょうか? A 確かに信託契約は委託者と受託者で設定できますが、現実には家族会議を開いて関係者全員が納得してから締結すべきと考えます。 家族信託の内容は、委託者と受託者だけではなく受益者にも影響を与えますし、その他の推定相続人の利害にも関係してきます。委託者と受託者だけで勝手に内容を決めてしまうと、後日に他の推定相続人が不満や不信感を抱き、親族トラブルにつながってしまうケースが少なくありません。 むしろ家族信託を「家族会議」のきっかけにして、親御さんが高齢になったときの財産管理方法、死後の遺産相続方法などを関係者でしっかり話し合いましょう。 親御さんの想いや希望を子どもたちなどのご家族へ伝えて納得してもらっておけば、将来にわたるトラブルは発生しにくくなります。 Q9 家族信託は相続税対策になりますか? A 家族信託をすることで相続税が安くなることはありません。 相続税を節税するには、別途生前贈与を行ったり保険に加入したりして、対策を練る必要があります。 家族信託を利用することで、不動産の有効活用や資産の組み換えを本人の判断能力が衰えた後でもすることが出来て、相続税対策を継続することが出来る可能性があるだけです。 相続コンシェルジュは相模原・町田エリアを中心に家族信託への支援を積極的に行っています。無料でご相談を承っていますので、疑問がありましたらどのようなことでもお気軽にご相談ください。
最終更新日 2022.08.05投稿日 2022.07.17
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よくある質問
2代以上先の相続人を指定できる「受益者連続型家族信託」(跡継ぎ遺贈)について
後の世代への財産承継方法を検討するとき、次世代だけではなく2代先、3代先の財産継承者まで指定したいニーズがあります。たとえば次は長男、その次は次男の子どもへ財産を譲りたい方もたくさんおられるでしょう。 そんなとき、遺言では対応できませんが「家族信託」であれば希望を実現できる可能性があります。 今回は2代以上先の相続人や財産継承者を指定できる「受益者連続型家族信託(跡継ぎ遺贈)」について解説しますので、相続対策を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。 受益者連続型家族信託とは 受益者連続型家族信託とは、何代にもわたって受益者を指定できる家族信託の一手法です。 家族信託を設定する際には、委託者と受託者、受益者の3者を決めなければなりません。 委託者は財産を預ける人、受託者は財産を預かる人、受益者は財産管理によって利益を受ける人です。 上記のうち「受益者」は財産管理が行われている間に変更できます。たとえば当初の受益者が死亡したら2人目の受益者、2人目の受益者が死亡したら3人目の受益者へ受益権を移していけるのです。 この仕組みを利用すると、当初の財産所有者である委託者の希望とおりに、財産を次世代、その次の世代へと脈々と伝えられます。 たとえば委託者の死亡後は長男、その次は次男の子どもに財産を受け継がせるなど、2代以上にわたる遺産相続方法を指定できるのが受託者連続型家族信託の特徴です。 受益者連続型信託と遺言書との違い 一般では、死後に特定の人へ遺産を受け継がせる方法として「遺言」が知られています。 実は受益者連続型家族信託を利用すると、遺言では実現できない希望を実現できるメリットがあるので、以下で具体的にみてみましょう。 遺言では次の世代までの相続方法しか指定できない 確かに遺言を遺すと、遺言者の次の世代への財産引き継ぎ方法を指定できます。 たとえば長男や配偶者にすべての財産を遺したり、孫やお世話になった人などに財産を受け継がせたりもできるでしょう。 しかしその次の世代への相続方法は指定できません。たとえば長男に財産を集中させたとしても、長男が死亡するときには長男が誰に財産を譲るか決められないのです。 父親としては「まずは長男、長男には子どもがいないから次男の子どもに譲りたい」などと思っていても、長男自身が遺言を書かなければ長男の嫁に大部分の財産が相続されるでしょう。長男が遺言をすればまったく無関係な第三者へ財産がわたってしまう可能性もあります。 このように遺言書では「相続方法を指定できるのは一代限り」という限界があります。 受益者連続型信託は遺言書の限界を克服できる 受益者連続型信託を利用したら、何代にもわたる財産引き継ぎ方法を指定できます。 人数に上限はなく、3世代先、4世代先の相続方法であっても指定できる可能性があります。 たとえばまずは配偶者にすべての財産を遺し、その後は長男に財産を受け継がせ、長男亡き後は次男の子ども(孫)に受け継がせる、などの指定も可能となります。 このように何世代にもわたる財産引き継ぎ方法を法的に指定できる制度は、受益者連続型家族信託のみ、といってもよいでしょう。 富裕層などの方で財産を確実に子孫へ伝えていきたい場合、家族信託は非常に有効な手段となります。 受益者連続型家族信託の活用例 内縁の配偶者がいる、子どもがいないご夫婦のケース 内縁の配偶者がいる場合や子どものいないご夫婦の場合、受益者連続型家族信託が非常に役立ちます。 Aさんは内縁の妻であるBさんと暮らしており、前妻との間に2人の子どもがいます。Bさんとの間に子どもはありません。 Aさんとしては、自分が死亡したらまずはBさんに自宅や預金などの財産を譲りたいのですが、Bさんが死亡したら前妻との間の子どもに財産を受け継がせたいと考えています。 この場合、もしもBさんに遺言で財産を遺贈してしまうと、Bさんが死亡した後に財産がBさんの親族に渡ってしまい、Aさんの希望は実現できません。受益者連続型信託で、当初の受益者をBさん、Bさんの死亡後には前妻の子どもと指定しておけば、「Bさん→前妻の子ども」の順番で財産を受け継がせることができて、Aさんの希望通りになります。 なお法律婚で子どもがいないご夫婦の場合でも、この方法は同じように使えます。 お子さまのいないご夫妻で財産承継方法にお悩みであれば司法書士までご相談ください。 長男に子どもがいないケース 家を継がせたい長男に子どもがいないケースでも受益者連続型家族信託が役立ちます。 Cさんには長男と長女があり、長男には子どもがいません。Cさんとしてはまずは長男に財産を引き継がせたいのですが、その後は長男の嫁ではなく長女の子ども(孫)に財産を譲って家を継いでほしいと考えています。 この場合、長男に遺言で財産を譲ってしまうと、長男死亡後に長男の嫁に相続されます。その後は長男の嫁の親族へと財産がわたってしまうでしょう。 受益者連続型家族信託を設定しておけば、まずは長男、次は長女、長女も死亡したら長女の子ども(孫)などと財産承継者を順番に指定できるので、家の財産を他家に分散させずに済みます。 事業承継における活用例 事業承継の際にも受益者連続型家族信託が役に立つケースがあります。 Dさんは会社経営をしており、経営者の交代を考えるようになりました。50代の長男と30代の次男がいます。Dさんとしてはまずは長男に会社を継がせ、長男引退後は年の離れた次男に経営を引き継いでもらいたいと考えています。 このようなとき、長男に自社株や事業用資産を遺贈してしまったら、長男は自分の子どもに会社を継がせようとするかもしれません。受益者連続型信託によってまずは長男、次に次男へ受益者を設定しておけば、Dさんの希望通りに会社を「長男→次男」の順番で引き継がせることができます。 受益者連続型信託の活用例は他にもたくさんあります。2代先以降の遺産相続方法まで決めておきたい方はぜひ、検討してみてください。 受益者連続型信託の期限 受益者連続型信託には「期限」があります。 信託法91条によると、受益者連続型信託を設定した場合「信託契約から30年後の受益者が死亡したときまたはその受益権が消滅したとき」に契約が終了します。 たとえば父親が「長男→次男の子ども→ひ孫」などと受益者を順番に指定したとしても、30年が経った時点の受益者が死亡したらその時点で家族信託の効果は失われます。 財産承継者を永遠に指定できる制度ではないので注意しましょう。 受益者連続型信託と相続税 受益者連続型信託を利用する場合、相続税にも注意しましょう。 家族信託では、受益者の死亡によって受益者が交代すると、その時点で「相続税」がかかります。受益者連続型信託の場合、複数回受益者が変更されることが想定されますが、その度に相続税が課税される可能性があります。 何度も頻繁に受益者変更を繰り返すと、財産が目減りしてしまうでしょう。 家族信託を利用する際には税金のシミュレーションもしておくべきです。 受益者連続信託と遺留分 法的には、家族信託によっても遺留分を侵害する可能性があると理解されています。 受益者連続型信託で受益者を指定、変更すると、そのたび「遺留分侵害額請求」が行われる可能性があるといえるでしょう。複数の相続人がいる場合には、遺留分対策も並行して行う必要があります。 受益者連続型家族信託は、相続コンシェルジュへお任せください 2代、3代以降先の相続人を指定したい場合、子どものいないご夫婦、ご長男にお子さまのおられない方は、家族信託を利用すれば円満に相続を進められる可能性があります。 当事務所では相模原、町田エリアで積極的に相続サポートに取り組んでいますので、ぜひとも一度、ご相談ください。
最終更新日 2022.05.30投稿日 2022.05.06