家族信託

家族信託では「家族会議」が重要!進め方、開き方を専門家が解説

最終更新日 2022.05.30投稿日

家族信託をうまく活用すると将来認知症になったときの財産凍結を防止できるだけではなく、死後の相続対策にもなります。

ただし家族信託を成功させるには、設定時にしっかり「家族会議」を行っておかねばなりません。

今回は家族信託で「家族会議」が必要な理由や進め方について相続の専門家が解説します。
これから信託を利用して認知症対策や相続対策を行いたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

家族信託で重要な家族会議とは

家族信託で開くべきとされる「家族会議」とはどういったものなのでしょうか?

家族会議は、親などの委託者と受託者になろうとする子ども、さらには他の親族(受託者以外の子どもや孫、場合によっては兄弟姉妹や甥姪など)も交えて家族信託の方法について話し合うことです。

家族信託は「信託契約」という契約の一種であり、法的には「委託者」と「受託者」の合意によって成立します。

しかし家族信託を設定すると、受託者以外の多くの親族に影響が及ぶ可能性があります。
たとえば親が重要な資産を受託者に預けて管理処分方法を指定すると、受益者以外の相続人の相続分が減ってしまうケースも考えられるでしょう。
また家族信託を利用すると財産が受託者名義に変更されるので、他の相続人が「贈与」と勘違いして不満を抱く可能性もあります。

そこで事前に受託者以外の相続人や関係者も交えて家族会議を開き、家族信託についての理解を求めておく必要があるのです。

家族信託の際、家族会議を開かなかった場合のリスク

もしも家族信託を設定する際、家族会議を開かなかったらどういったリスクが生じるのでしょうか?

他の推定相続人が不満を抱いて親族関係が悪化する

家族会議を開いて受託者や受益者以外の推定相続人に理解を求めておかないと、他の推定相続人が疑念や不満を抱く可能性があります。
「受託者や受益者のみが優遇されている」と感じて反感を抱き、親族関係が悪化するリスクが高まるでしょう。

遺産相続トラブルが起こりやすくなる

家族会議を開いて推定相続人に家族信託についての理解を得ておかないと、遺産相続トラブルが起こる可能性も高まります。

たとえば家族会議で親が子どもたちに自分の考えや希望を直接告げて理解してもらっておけば、子どもたちも相続発生後に遺留分を請求したり「家族信託契約は無効」などと主張したりしないでしょう。

しかし何も告げられなかったら、相続分を減らされた子どもは親の死後に「遺留分侵害額」の支払いを請求するでしょうし、場合によっては「信託契約書は偽造」「親は認知症になっていて信託契約を締結できる状態ではなかった」などといいだして信託契約の効果を争う可能性もあります。

関係者の意見が無視される

遺産相続は、親族全員に関係する重要な事項です。
本来なら推定相続人全員の意見を聞いて「全員にとって最善の解決方法」を模索し信託のスキームを決めるべきでしょう。委託者と受託者以外の家族から意見を募ることにより、契約当事者では思い浮かばなかった良いアイデアを発見できる可能性もあります。

一方、家族会議を開かなければ委託者と受託者だけで方法を決定してしまうので、他の家族の知恵を得ることができません。
関係者の意見が無視されたままになるのは、大きなデメリットになるでしょう。

受託者が暴走する可能性もある

家族信託を設定する際には、受託者が専断的な行動をとらないよう注意すべきです。
そのためには、受託者が信託契約の内容に従った行動をとるように、誰かが適切に監督しなければなりません。

家族会議を開いて親族全員が信託契約の内容を把握していれば、事実上家族全員が受託者を監視できます。家族会議には受託者の暴走を防ぐ効果もあるといえるでしょう。

家族会議の開き方、進め方

実際に家族会議を開くときにはどのように進めればよいのでしょうか?

家族会議に参加する人

家族会議には、以下のような人を参加させる必要があります。

  • 親などの委託者
  • 子どもや孫などの受託者、受益者
  • 委託者、受託者、受益者以外の推定相続人

場合によっては相続権を持たない嫁や婿、今後相続人になりうる兄弟姉妹や甥姪なども交えて話し合うべきケースも考えられます。

家族会議を開くタイミング

家族会議を開くタイミングは「相続や認知症対策が気になったとき」です。
家族信託を利用するかどうか決めていない段階でも、何らかの対策が必要と感じたら家族会議を開いてベストな対処方法を話し合いましょう。

重要なのは「委託者となる親が元気なうち」に家族会議を開くことです。弱ってからでは充実した意見交換ができませんし、意思能力を失ってしまったら家族信託の設定にも間に合いません。

早め早めの対応が重要となるでしょう。

親が子どもに声をかける

家族会議を開始する際には、委託者となる親が子どもなどの推定相続人へ声をかけるのが理想です。
受託者となる予定の子どもが声をかけると他の推定相続人から「財産を狙っているのではないか?」などと反感を抱かれる可能性があるからです。

ただし親が積極的に動かない場合、子どもの側から提案すべきケースもあります。家族会議のきっかけの作り方はケースによって異なるので、迷ったら専門家に相談してみてください。

親の希望を伝えるとともに、十分な情報を提供する

家族会議においては、親が子どもたちにしっかり希望を伝え十分な情報を与える必要があります。
たとえば将来、在宅介護を希望するのか施設介護を希望するのか、またどのような財産を所持していて誰にどういった遺産を分け与えようと思っているのか、家族信託を使ってどういった希望を実現したいのかなど。

親の意見が伝わり十分な情報を得られたら、子どもたちも受け入れやすく適切な判断が可能となるでしょう。

関係者の意見を聞く

家族会議では、受託者や受益者となる子どもはもちろんのこと、それ以外の推定相続人の意見や希望もしっかり聞くことが大切です。
親がすでに希望を固めているとしても、押し付けると反感を買う可能性があります。
関係者の意見を聞いた上で、親が異なる希望をもっているならその理由も伝えて納得してもらいましょう。
丁寧に対応することにより、将来の無益なトラブルを予防しやすくなります。

家族会議の議事録を作成する

家族会議は、数回にわたって行われるケースも少なくありません。
どういった経過をたどったのか後になっても明らかにできるように、できれば簡単な議事録を作成しておきましょう。
議事録には出席者が署名押印しておくとより丁寧です。

議事録を作成しておくと、将来「信託契約は親の意思を無視して締結されたもので無効」などと主張されるリスクを低減できるメリットがあります。

専門家を交えて会議を開くメリット

家族信託の準備としての家族会議を開く際には、司法書士などの家族信託の専門家を交えるようお勧めします。

専門家が交通整理を行いスムーズに進められる

専門家が家族会議のサポートをすれば、会議をスムーズに進めることができます。
たとえば親族同士で意見が合わず紛糾しそうになった場合や話が横道にそれてしまったときなど、専門家が同席すれば軌道修正できるでしょう。
第三者が関与することによって互いに感情を押さえ、冷静に対処しやすくなるメリットもあります。

適正に会議が行われたことが証明される

第三者が関与していなければ、どのような方法で家族会議が開かれたのかが明確になりにくいでしょう。
専門家が同席して様子を見守り議事録など作成しておけば、家族会議の流れが記録に残り、適正に運営された事実を後々にまで証明しやすくなります。将来のトラブル防止に役立つメリットがあるといえるでしょう。

相続コンシェルジュは相模原、町田エリアを拠点として数多くのご家庭の家族信託を支援してまいりました。将来の介護や認知症による財産凍結に向けた対策、遺産相続の準備を進めたいとお考えの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。