家族信託
★生前贈与とは
最終更新日 2022.05.06投稿日
家族信託コラム
家族信託
最終更新日 2022.05.06投稿日
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家族信託
財産管理委任契約と家族信託の違い
高齢になり体力が低下したときに備える財産管理方法には、たくさんの種類があります。それぞれ特徴やメリット・デメリットがあるので、状況に応じて適切な方法を選択しましょう。 今回は数ある財産管理のスキームのうち「財産管理委任契約」と「家族信託」とその違いをご紹介します。 親が高齢になってきて心配している方、ご自身が高齢になって財産管理に不安をおぼえている方は、是非参考にしてみてください。 財産管理委任契約とは 財産管理委任契約とは、預貯金や不動産などの財産管理を他者へ任せる契約です。 たとえば体調が悪くなって自分で外へ行くのが難しくなった方が、子どもに財産管理を委任して預貯金や自宅不動産などの管理を任せるケースが典型例となります。 委任事項の具体的な内容は契約によって自由に取り決めてかまいません。 ただし受任者が金融機関で払い戻しなどを受ける場合には、代理権を証明する必要がありますし、不動産を売却する場合にも委任者の同意が必要です。 また受任者には委任者が単独で行った行為についての「取消権」は認められません。 委任者ご本人が悪徳業者にだまされて不利な契約をしても、受任者が契約を取り消して保護することは不可能です。 財産管理委任契約の注意点 財産管理委任契約を利用する際、受任者の独断による行動や不正に注意してください。 裁判所などの第三者による監督が及ばないので、不正が行われても誰も気づかず放置されるリスクがあります。 また世間での認知度が低く、公正証書が作成されないケースも多く社会的な信用が不十分といえます。「安全性」は弱い制度といえるでしょう。 家族信託とは 家族信託は、信頼できる家族や親族に財産を預けて管理運用処分してもらう信託契約です。財産管理委任契約と同様に、不動産や預貯金、株式などを預けて管理してもらえます。たとえば預貯金の入出金、振り込み、株式の積極的な運用、不動産の管理売却などを任せられます。 財産管理委任契約とは異なり、行為時における委託者の個別的な同意は不要です。当初に与えられた権限にもとづいて、受託者が柔軟に対応しやすい制度といえるでしょう。 財産管理委任契約と家族信託の違い一覧表 財産管理委任契約と家族信託は似ていますが、異なる制度です。以下で違いをまとめましたので、ご覧ください。 財産管理委任契約 家族信託 委任者(委託者)の判断能力が低下した後も利用できるか できない できる 預貯金の管理(入出金、振り込み、引き落としの設定など) 代理権の証明が必要で、金融機関によっては対応してもらえないケースがある できる 不動産管理売却 代理権が必要で、本人の判断能力が低下していると売却できない できる 死後の効力 ない ある 受任者(受託者)の判断による柔軟な対応 難しい できる 以下でそれぞれの項目について詳説します。 委任者(委託者)の判断能力が低下した後も利用できるか 財産管理委任契約も家族信託も、「委任者(委託者)が元気なうちに締結」しなければなりません。委任者や委託者の判断能力が低下してしまったら、有効な契約ができなくなってしまうためです。この点では財産管理委任契約も家族信託も同じといえるでしょう。 判断能力が低下した後でも利用できるのは、家庭裁判所へ申立をする「成年後見制度(法定後見)」のみです。 一方で「契約後、委任者(委託者)の判断能力が低下したとき」の効果が大きく異なります。 財産管理委任契約の場合、委任者の判断能力が低下すると利用が難しくなります。 なぜなら、受任者が行動するたびに委任者による権限委任の証明が必要となるためです。 たとえば受任者が不動産を売却する際には委任者の同意が必要ですが、委任者がすでに判断能力を失っていると有効な同意ができません。委任者の判断能力が失われると、財産管理委任契約は事実上使えなくなる可能性が高いといえるでしょう。 家族信託の場合には、委託者の判断能力が低下しても問題なく効力を継続させられます。 受託者が財産管理運用、処分する際に委託者が個別に同意する必要はありません。 預貯金の管理についての違い 財産管理委任契約と家族信託では、預貯金管理方法についての取り扱いも異なるケースがあります。 財産管理委任契約によって預貯金の管理や運用を受任した場合、受任者は金融機関へ行って代理権を証明し、入出金や振り込みなどをする必要があります。 しかし財産管理委任契約の世間的な認知度や信用性が低いこともあり、金融機関によっては受任者による預金操作を認めないケースも少なくありません。 そうなったら預貯金管理を委任する意味がなくなってしまうでしょう。 家族信託であれば、「信託口口座」という専門の口座を作って管理するので、金融機関に取引操作を拒否されるリスクはありません。 より確実に財産管理を委託したいなら、家族信託を利用すべきといえるでしょう。 不動産管理売却についての違い 不動産を売却する際にも違いが生じます。財産管理委任契約における「受任者」が不動産を売却する際には、委任者が同意しなければなりません。委任者が認知症になって判断能力を失っていると、有効な同意ができず売却が不可能となってしまう可能性が高くなります。 家族信託であれば、信託契約締結時に不動産の「信託登記」を行って受託者の権限を明らかにします。受託者は単独で不動産の売却ができるので、本人の判断能力が低下しているかどうかは問題になりません。 不動産を子どもなどの親族に預けて、将来介護施設へ入居する際などに売却してもらいたいなら家族信託の利用をお勧めします。 死後の効力 財産管理委任契約と家族信託とでは、死後の効力も大きく異なります。 財産管理委任契約は、委任者が死亡すると終了します。財産の相続方法や移転先、死後の財産管理についてまで定める効果は基本的に認められません。 家族信託であれば、死後の財産管理方法や財産を受け継がせる相手先を定められます。 たとえば生前は委託者本人のために財産を管理してもらい、死後は遺された配偶者や子ども、孫のために管理してもらうなど、死後に子どもや孫に財産の権利を受け継がせる指定もできるので「遺言書代わり」に使えます。死後にも効力を継続できることは、家族信託の大きなメリットといえるでしょう。 受任者(受託者)の判断による柔軟な対応 財産管理委任契約と家族信託を比べると、家族信託の方が柔軟に対応しやすくなっています。 財産管理委任契約の場合、受任者は「代理権」を証明しなければならないので、各場面でひと手間かけなければ対応できません。金融機関に取引を断られたり、本人の判断能力低下後や死後に対応が難しくなったりする問題もあります。 家族信託であれば、受託者はあらかじめ定められた権限の範囲内で自由に財産の管理処分や運用ができます。 預貯金の払い戻しや振り込み、不動産の売却はもちろんのこと、委託者が死亡した後に遺された家族やペットへの対応、また事業承継にも応用できます。 家族信託の活用例 障害のある子どもが遺される場合、信頼できる親族へ居住用不動産や預貯金を託し、子どものために管理してもらう 委託者の死亡後は遺された妻のために財産を管理してもらい、その後は長男のために管理してもらい、最終的に孫に財産を帰属させる 「何世代にも渡る財産引き継ぎ方法の指定」ができるのは、家族信託のみです。高齢になった後の財産管理や死後の遺産相続対策として、家族信託は極めて優秀な制度といえるでしょう。 家族信託の注意点 家族信託もメリットばかりではありません。信託契約の設定や信託登記には手間がかかります。柔軟に対応できる分設定方法の幅が広く、ご家族の状況に応じた有効なスキームを組むためには専門家の関与が不可欠となるでしょう。手間とコストが発生する可能性があります。 財産管理、家族信託は司法書士へご相談を 高齢になった後の財産管理方法を検討するときには、さまざまな選択肢から最適なものを選びましょう。 当事務所はこれまで「相続コンシェルジュ」として多種多様なご家庭の財産管理や相続のサポートを行ってまいりました。相模原や町田で財産管理に不安を抱えている方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
最終更新日 2022.08.28投稿日 2022.08.27
家族信託
家族信託契約は公正証書にすべき?メリット・デメリットや作成方法を専門家が解説
家族信託を上手に利用すると、将来認知症になったときにも家族にきちんと財産管理してもらえて安心です。遺産相続トラブルも予防できて便利なので、関心を持つ方が徐々に増加しつつあります。 家族信託は「信託契約」という一種の契約なので、設定するときに「公正証書」を作成できます。果たして家族信託の契約書は公正証書にすべきなのでしょうか? 今回は家族信託の契約書を公正証書にするメリットやデメリット、公正証書を作成する方法を解説します。 これから家族信託を利用してみたい方はぜひ参考にしてみてください。 家族信託で公正証書は必須ではない 家族信託を利用するとき、公正証書化は必須ではありません。 自分たちで信託契約を作成し、保管していても契約自体は有効です。 以下ではそもそも公正証書とはどういった書類なのか、みてみましょう。 公正証書とは 公正証書とは、公証人が作成する公文書の1つです。公証人は公務員の1種で、検察官や裁判官、法務局長などの法律の専門家が職務を行うケースが多数となっています。 公正証書は信用性が高いので、一度作成されたら「無効」になるケースは少数です。原本が公証役場で保管されるので、当事者が保管する場合と異なり紛失リスクもありません。 金銭債権について「強制執行認諾条項」を入れておけば、義務者が支払いをしないときに権利者はすぐに差し押さえができて便利です。調停や裁判をしなくても財産や債権を差し押さえて債権回収できるので、債権者側にとっては大きなメリットとなります。 以上が公正証書の基本情報です。 1-2.家族信託と公正証書の関係 法律上、「必ず公正証書を作成しなければならない契約類型」がいくつかあります。 たとえば高齢になったときの財産管理に備える「任意後見契約」を利用する場合には、必ず「任意後見契約書」を公正証書にしなければなりません。 一方、家族信託の場合には必ずしも公正証書にする必要はありません。委託者と受託者が合意すれば契約は成立します。自分たちで文案を作成し、当事者が納得して署名押印すれば契約書として有効なので、あえて公正証書にしない方も少なくありません。 公正証書を作成するメリット 家族信託の契約を公正証書にすると、どういったメリットがあるのでしょうか? 無効になりにくい 自分たちだけで契約書を作成すると、さまざまな不備が生じる可能性があります。 必要事項を入れなかったり余計なことを書いてしまったりするケースもよくありますし、いったん署名押印した人が後になって「自分がサインしたものではない」などと言い出す可能性もあるでしょう。せっかく契約書を作成しても、場合によっては無効になってしまうリスクがあります。 公正証書なら公証役場で公証人がきちんと本人確認と意思確認をして作成するので、後になって当事者が「誰かが勝手にサインした」と主張するのは難しくなります。 公証人が内容を確認するので、必要事項を抜かして無効になることもないでしょう。 より確実に契約内容を実現したいなら、公正証書にすべきといえます。 トラブルを予防しやすい 家族信託契約を締結しても、後にさまざまな理由でトラブルにつながってしまうケースがあります。 たとえば親が子どもに不動産などの高額な資産を信託すると、受託者以外の親族が不満をもって「契約は無効だ」「実は親の意思ではないのでは?子どもが無理に作成させたのでは?」などと言い出す可能性があります。委託者と受託者の関係が悪化して、一方が契約書を破り捨ててしまうケースもあるでしょう。 公正証書が作成されていれば周囲の親族も「親の意思に反して作成された」とは言いにくくなりますし、原本が公証役場で保管されるので破棄されたり隠されたりするリスクもありません。 公正証書にはトラブルを予防しやすいメリットがあります。 証明力が高い 家族信託契約を締結しても、将来トラブルが発生したら裁判が起こる可能性はあります。 そんなとき、自分たちで作成した契約書しかなかったら無効や取消原因が認められて家族信託の効果が認められないかもしれません。 一方で、公正証書は証明力の高い「証拠」となるため、提出すれば有効性が認められる可能性が高くなるでしょう。 公正証書には高い証明力が認められるメリットもあります。 紛失リスクがない せっかく家族信託の契約書を作成しても、自分で保管するとどうしても紛失しまうリスクがあります。 特に家族信託の効果は委託者の死後に継続するケースも多く、長期間になりがちです。 委託者が認知症になったら自分で適切に管理するのは難しくなりますし、死亡したら別の人が契約書を預かって保管しなければなりません。 このように長年が経過すると、だんだんと保管がずさんになっていずれ契約書が失われるリスクが高くなってしまいます。 公正証書にしておけば原本が公証役場で保管されるので、紛失してしまうリスクはありません。 公正証書を作成するデメリット 一方で、公正証書を作成するデメリットもあります。 費用がかかる 公正証書を作成するときには費用がかかります。 金額は信託財産の価額によって変わります。 信託財産の価額 作成費用の金額 100万円以下 5,000円 100万~200万円以下 7,000円 200万~500万円以下 11,000万円 500万~1,000万円以下 17,000万円 1,000万~3,000万円以下 23,000万円 3,000万~5,000万円以下 29,000万円 1億~3億円以下 43,000万円+(5,000万円ごとに13,000円加算) 3億~10億円以下 9.5万円+(5,000万円ごとに11,000円加算) 10億円以上 24.9万円+(5,000万円ごとに8,000円加算) 手間がかかる 公正証書を作成するには、当事者双方が公証役場へ出向いて契約書を確認し、署名押印しなければなりません。 その際、身分証明書や財産関係の資料など集めなければならない書類もいくつかあります。 手間や時間をとられることもデメリットの1つとなるでしょう。 以上のようなデメリットはありますが、トラブル防止効果や紛失リスクがないことなどからして、専門家としてはやはり公正証書化すべきと考えます。 公正証書の作成方法、手順 家族信託の契約書を公正証書にするときの手順は以下の通りです。 自分たちで家族信託契約書の文案を作成する 家族信託の契約書を公正証書にしたい場合、事前に自分たちで家族信託の契約書の文案を作成する必要があります。 公証役場では「どういった方法で家族信託のスキームを組めば良いか」などの法律相談には対応してくれません。自分たちで家族信託の内容を決めて、公証人へ伝えなければなりません。 まずは家族信託のスキームを決めてわかりやすく文章化しましょう。 公証役場へ申し込みをする 文案ができたらお近くの公証役場へ申込みをします。特に管轄の決まりはなく、全国どこの公証役場でも申込みが可能です。 日にちを決めて当事者双方が公証役場へ行く 公証人と日取りを調整し、決まった日に公証役場へ行きます。 その際、必要書類を指示されるので当日までに準備しましょう。 当事者が時間を取れない場合、代理人に作成を依頼できます。ご家族に頼んでも良いですし、司法書士などの専門家にも任せられます。 署名押印して謄本を受け取る 指定された日に公証役場へ行くと、公証人が契約書(公正証書)を作成してくれています。 内容を確認し、間違いがなければ当事者双方が署名押印し、公証人が公正証書を作成します。 原本は公証役場で保管されるので、当事者には写し(謄本や正本)が手渡されます。 大切に保管しましょう。 家族信託の設定は専門家へ 家族信託のスキームを組むときには、ケースに応じて個別的に設定しなければなりません。 きちんと検討しないと適切な契約書を作成できないので注意しましょう。 専門家に契約書作成を依頼すれば、そのまま公正証書のかたちに整えられるので、当事者の方に手間がかかりません。忙しい方の場合、公証役場への代理出頭も依頼できます。 相模原や町田エリアで家族信託に関心のある方はぜひ老後問題解決コンサルタントの司法書士までお気軽にご相談ください。
最終更新日 2022.08.28投稿日 2022.08.17
家族信託
家族信託を使えば「遺留分」トラブルを回避できるのか?
家族信託を使えば「遺留分」トラブルを回避できるのか? 相続対策では「遺留分」への配慮が重要です。 遺言や生前贈与によって財産を受け継がせたい人へ集中させても、他の相続人が「遺留分」を主張すると目的を達成しにくくなってしまうからです。 家族信託を利用したら遺留分トラブルを回避できるのでしょうか? 実は近年、家族信託と遺留分についての重要な裁判例も出ています。 今回は家族信託と遺留分の関係についての法的な考え方や遺留分対策の具体的な方法を解説します。 遺留分対策が気になっている方はぜひ参考にしてみてください。 遺留分とは 遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限度の遺産取得割合です。 親などの直系尊属のみが相続人の場合には遺産全体の3分の1、それ以外のケースでは遺産全体の2分の1の遺留分割合が保障されます。 遺言や生前贈与によって遺留分を侵害すると、侵害された権利者は侵害者に対し「遺留分侵害額請求」という金銭請求ができます。 請求の相手方となるのは、遺贈を受けた相続人や受遺者、生前贈与や死因贈与の受贈者などです。 1人の相続人に遺産を集中させるなど、あまりに不公平な遺言をすると遺留分トラブルが起こる可能性が高くなるので、注意しなければなりません。 たとえ長男などの特定の相続人に「100%の遺産を集中させたい」と思っても、遺留分が壁となって不可能となる可能性が高いのです。 家族信託と遺留分の関係 遺留分の対象となるのは、以下のような行為です。 遺言 遺言によって遺留分を侵害すると、遺留分侵害額請求の対象になります。 死因贈与 死因贈与は死亡を原因とする贈与です。これに対しても遺留分侵害額請求が行われる可能性があります。 生前贈与 死亡前1年以内の生前贈与は遺留分侵害額請求の対象です。ただし当事者が悪意(遺留分権利者を害することを知っていた)の場合、それ以前の生前贈与も遺留分侵害額請求の対象になる可能性があります。また法定相続人への贈与の場合には、相続開始前10年間のものが遺留分侵害額請求の対象となります。 上記からすると、遺留分侵害額請求の対象に「家族信託」は入っていないようにみえます。 ということは、家族信託を用いると遺留分トラブルを避けて1人の相続人や第三者へ財産を集中できるのでしょうか? 以下で詳細をみていきましょう。 従来の考え方 家族信託と遺留分の関係については、従来から「遺留分の対象になる」考え方と「遺留分の対象外とする」考え方が対立していました。 遺留分の対象にならないとする考え方 家族信託における「信託財産」は、委託者や受益者の財産とは隔離されて管理されます。 受託者は財産管理をしますが、単に管理するだけの立場なので財産の所有者ではありません。 このように信託財産が独立して管理されることから、家族信託で委託された財産は遺産の範囲に入らず、したがって遺留分侵害額請求の対象にもならない、という考え方が有効でした。この考え方によると、家族信託を利用して信託財産にしておけば、法定相続人からの遺留分侵害額請求を避けて1人に遺産を集中させることができます。 遺留分の対象になるという考え方 一方で、家族信託を利用すれば遺留分侵害額請求を免れるのは不合理であり、信託財産に含めるべきという考え方もありました。 東京地裁平成30年9月12日の判決内容 このように両説が対立していたところ、平成30年9月12日に東京地裁で非常に重要な判決が下されました。 このケースでは、委託者(被相続人)が長男への相続を回避するために家族信託を設定しました。長男には「収益を得られない物件」に関する受益権を設定することにより、見かけの受益権のみを与えて実際の経済的な価値を与えないようにしたのです。 長男は「このような信託契約は公序良俗に反し無効」と主張して、裁判を起こしました。 結論として裁判所は「遺留分制度を潜脱しようとする家族信託は公序良俗に反して無効」と判断しました。つまり家族信託を設定しても、遺留分侵害額請求を止められないということです。 家族信託を利用しても遺留分侵害額請求を止められない この裁判例により、現在は「家族信託によって遺留分侵害額請求を免れることはできない」という理解が定着しつつあります。 今後家族信託を利用するとしても、法定相続人の遺留分侵害額請求を避けるのは難しいと考えるべきでしょう。 遺留分を侵害する家族信託契約も基本的には有効 上記のような裁判例からすると「遺留分を侵害する家族信託契約は無効なのか?」と考えるかもしれません。 しかしそういった意味ではありません。基本的には、遺留分を侵害する内容の信託契約も有効と考えられます。 たとえば遺言や贈与について考えてみましょう。法律上「遺留分を侵害する遺言や贈与」ももちろん有効です。ただし「遺留分侵害額請求」の対象になるだけです。遺留分を侵害された法定相続人が遺留分を主張しなければ、不公平な遺言や贈与がそのまま実現されるケースもあります。 家族信託についても、同様に考えられるでしょう。 ただし「遺留分権利者に対しては無価値な財産の受益権だけを与える」といったように「遺留分の制度を潜脱するような設定方法」をすると、無効になる可能性があります。 家族信託契約を締結するときには、遺留分との関係を正しく理解して適切に対処しなければなりません。 遺留分対策方法 家族信託でも遺留分侵害額請求を避けられないとすれば、遺留分対策としてはどういった方法が有効なのでしょうか? 生命保険 1つは生命保険の活用です。死亡保険金は、「遺産の範囲」に入らないと考えられています。 保険金の受取人を指定しておけば、死亡保険金は受取人の「固有の財産」となり、遺産分割協議の対象になりません。 財産を集中させたい相続人や親類がいるなら、生命保険の受取人に指定しておきましょう。 また生命保険を受け取らせると、遺留分侵害額請求が行われた際の「支払資金」にも活用できます。 たとえば4000万円の遺産(不動産)があり2人の子どもが相続人となるケースを考えてみましょう。長男に「すべての遺産を相続させる」と遺言をしたうえで、長男に3000万円分の生命保険金を受け取らせる保険契約を締結しておきます。 この場合、次男は長男へ1000万円の遺留分侵害額請求をする可能性がありますが、長男は3000万円の生命保険金を受け取れるので、そこから次男へ遺留分侵害額を払えます。 さらに生命保険には相続税控除も認められるので、受け取らせると税額を低く抑えやすいメリットもありますし、生命保険金を納税資金にも流用できます。 このように生命保険をうまく活用すれば希望する人へ財産を受け継がせることができて遺留分侵害額対策、相続税対策にもなります。 ぜひ家族信託と併用して生命保険を利用しましょう。 生前贈与 遺留分対策としては生前贈与も有効です。 基本的には「相続開始前1年」より古い生前贈与は遺留分侵害額請求の対象にならないためです。法定相続人への生前贈与であっても「相続開始前10年」より前のものであれば遺留分侵害額請求対象から外れます。 大切なのは、「早めに生前贈与すること」です。死亡直前になってから生前贈与をすると遺留分侵害額請求の対象になりますし、相続税課税対象になる可能性も高くなります(死亡前3年に行われた贈与には相続税がかかります)。 遺留分対策、相続税対策で生前贈与を行うならなるべく元気な早期の段階で生前贈与を行いましょう。 遺留分対策、家族信託は老後問題解決コンサルタントへご相談を 相続対策で遺留分が気になっているなら、必ず専門家へ相談するようお勧めします。自己判断で対応すると、死後に遺留分侵害額請求が起こって大きなトラブルになってしまう可能性が高くなるからです。 当事務所では相模原、町田エリアで相続対策に積極的に取り組んで参りました。家族信託に関心のある方、遺留分が心配な方は一度お気軽にご相談ください。
最終更新日 2022.08.28投稿日 2022.08.07
認知症対策生前対策相模原・町田