家族信託
家族信託でどんな税金がかかる?相続税?贈与税?パターン別に解説
最終更新日 2022.07.28投稿日
高齢になったときの財産管理や相続対策として「家族信託」を検討するご家庭が増えています。
ただ「家族信託に関心はあるけれど、自分たちの状況で利用できるのかわからない」方も多いでしょう。
そこで今回は、家族信託を利用すべきケースや具体的な状況を6つ、ご紹介します。
家族信託に関心を持っていて詳しい内容を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
家族信託とは
家族信託は信頼できる家族に財産を預けて管理運用や処分をしてもらう信託契約です。
委託者は受託者に信託財産を預け、指定したとおりに管理や処分を行ってもらいます。
【家族信託に登場する基本的な用語】
- 委託者…財産を預ける人
- 受託者…財産を預かって契約に従い管理運用処分する人
- 受益者…家族信託によって利益を受ける人
- 信託財産…預けられる財産
たとえば親が委託者となり子どもを受託者として、不動産などの財産を預けて管理してもらうのが、家族信託の典型例となります(他にもいろいろな活用方法があります)。
以下で具体的にどういったケースで家族信託を活用できるのか、みていきましょう。
認知症対策
今は元気だけれども将来認知症になったときの財産管理が心配なら、家族信託が有効です。
認知症が進行すると、ご本人は自分の意思で財産を管理できなくなります。意思能力が失われるため、有効な契約ができません。たとえば介護施設に入居するために家を売却して資金を作りたいとき、認知症にかかってしまっていたら売却活動ができないので、必要なお金を用意できない可能性があります。
生活費のために預金を使おうとしても自分では出金するのが難しくなるでしょうし、子どもには代理権がないので勝手に入出金や振り込みなどができません。
このようなとき、事前に家族信託によって子どもに財産を託していたら、子どもが不動産の管理や売却、預貯金の入出金や振り込みなどの手続きを進められます。
親が認知症になっても安心して生活するため、家族信託を活用しましょう。
高齢になったときの資産管理
不動産オーナーや株式取引をしている方など、資産を持った方にも家族信託がおすすめです。
資産家の方が高齢になると、自分で管理運用するのが難しくなるものです。認知症にならなくても、多種多様な資産の状況を的確に把握してそれぞれに関して適切な運用を行うのは体力的にも精神的にも厳しくなるでしょう。
元気なうちに信頼できる家族に資産を預けて管理運用を任せれば、自分が年をとってしんどくなっても安心です。委託者自身を受益者としておけば、株式の配当金や収益物件からの賃料などは委託者が受け取れます。
死亡したときには指定した人に財産を受け継がせることができるので、遺言書代わりにも使えるメリットがあります。
資産家の方が財産管理に自信をもてなくなってきたら、早めに家族信託を設定しましょう。
障害をもった子どものための財産管理
障害をもったお子様がおられると、ご両親は自分たちの亡き後が心配になるものです。
お子様が自分で預金などの管理ができない状態では、一括で財産を与えても親亡き後の生活は保障されません。
そんなときには家族信託が有効です。たとえば障害をもったお子様のご兄弟(別の子ども)や孫、甥姪などの親族に資産を預け、障害をもったお子様のために管理運用してもらいましょう。毎月継続的に支出や収益を管理してもらうことも可能です。
そうすればご本人で財産管理しなくてもよいので、重度の障害を抱えた方であっても生活が守られやすくなります。
先以降の相続方法の指定
財産承継を考えるときには、遠い将来を見据えるべきケースがあるものです。
夫婦のみの資産承継
たとえば子どもがおらずご夫婦のみのご家庭では、夫が死亡した後に妻に財産を受け継がせたい要望があるものです。ただし妻が死亡した後は妻側の親族ではなく、できれば夫側の親族に資産を受け継がせたいことも少なくありません。
また夫が再婚で前妻との間に子どもがいれば、妻の死亡後に「前妻との子ども」に資産を受け継がせたい場合も考えられます。
こういった状況において夫が妻へ財産を遺す旨の遺言書を作成しても、希望は実現できません。妻の死亡後は妻側の親族(親や兄弟)に引き継がれてしまうからです。遺言書では2代以上先の遺産相続方法を指定できません。
長男に子どもがいないときの資産承継
長男に子どもがいない場合にも、同様の問題が起こります。親としては、まずは財産を長男に相続させ、その後は次男の子ども(孫)に財産を引き継がせたい場合などもあるでしょう。
しかし遺言書で長男に財産を承継させると、後は長男がどのように対処するかわかりません。全額を慈善団体などに寄付されてしまう可能性もありますし、突然現れた交際相手に遺贈してしまう可能性もあるでしょう。
このように遺言書の効果は一代限りなので、2代先以降の財産引き継ぎ方法を指定できない限界があります。
家族信託なら2代以降先の財産引き継ぎ方法を指定できる
家族信託であれば、2代先以降の財産引き継ぎ方法を指定できます。
自分の後は妻、その後は自分の兄弟や前妻の子ども、その後は孫、など3代に及ぶ指定も可能となっており、柔軟に対応できるのは大きなメリットです。
ご夫婦のみでお子様のいないご家庭、ご長男に子どもがいないご家庭、直系の血族に財産を引き継いでいきたい方などは、ぜひ家族信託を検討してみてください。
事業承継
家族信託は、事業承継にも非常に有効です。
事業承継の際には、以下のような問題に対応しなければなりません。
- 株式の移転
- 経営権の移転
- 後継者候補に経営者としての脂質があるかどうかの見極め
いずれは株式を後継者へ移転すべきですが、いきなりすべての権限を移譲すると不安を感じる先代経営者も多いのではないでしょうか?
また後継者に経営者としての資質がない場合には、株式や経営権の譲与を取り消すべき場面も考えられます。しかしいったん株式を贈与してしまったら、契約解除は簡単ではありません。
株式を贈与すると、配当金などは後継者の元に入るので、全経営者は利益を得られなくなってしまいます。
こんなとき、家族信託を利用すると、前経営者にも権利を残したまま株式だけを暫定的に移転できます。株式を信託するとき、受益者を前経営者としておけば、配当金は前経営者が受け取れるのです。「指図権」という権利を残しておけば、株主総会決議などの際に前経営者が権利行使できます。
また後継者に経営の資質がない場合には、信託契約を解除して株式を取り戻すことも可能です。
このように事業承継時には家族信託が非常に有効なので、中小企業経営者の方などはぜひ一度ご検討ください。
不動産をめぐる相続トラブルの防止
不動産を所有している方は、死後の遺産相続トラブルに注意しましょう。不動産が遺されると、相続人たちの間で意見が合致せず遺産分割協議で決裂してしまうケースが非常に多いためです。
たとえば1人の相続人が「売ってお金で分けたい」と主張しても、別の相続人が「不動産は売りたくない」というかもしれません。意見が合わないので「共有」にするケースもありますが、その場合にも「将来の共有トラブル」につながります。共有物件は共有者同士で合意しないと活用や処分ができないので、結局は話し合いが必要となってしまうのです。トラブルが激化すると裁判になるケースも少なくありません。
こういった不動産をめぐるトラブルは、家族信託によって予防できます。
たとえば子ども3人が相続人となる場合、長男に不動産を預けて他の子供達を受益者としておけば、長男が他の子供達のために不動産を管理します。収益の配分方法も指定しておけば、子供達3人が平等に収益を得られるので不満は出ません。
遺産分割協議を行う必要もないので、「売却したい相続人」と「不動産を残したい相続人」との間で意見対立が起こるリスクも発生しないでしょう。
不動産が遺されると、たとえ実家の土地建物だけであっても大きなトラブルになるケースが多々あります。もしも相続財産の中に1つでも不動産が含まれているなら、家族信託を検討しましょう。
相模原、町田の家族信託はお気軽にご相談ください
家族信託の設定は複雑で登記なども必要となるので、専門家の関与が必要です。相模原・町田エリアで相続の専門家をお探しの方がおられましたら、相続コンシェルジュの司法書士へお気軽にご相談ください。