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家族信託
【家族信託】親の所有する賃貸物件の管理はどうすれば?
資産管理や運用で役に立つ家族信託ですが、実際どのように利用されているのでしょうか? いくつかご相談いただいたことをご紹介します。 Q:賃貸物件を所有する、町田市Iさんからのご相談例 東京都町田市在住です。先祖伝来の土地を相続したのでそこに建てたアパートを2棟所有しています。 現在は賃貸物件として全室貸し出しており、その収益で生活していますが、高齢になってきたため今後の管理などについて悩んでいます。 一人娘に相続してもらう予定ですが、娘も自分で仕事をしており賃貸経営にはまるっきり知識もなく、また賃貸収入の面からもまだしばらくは私がアパート経営を続けるつもりですが、もし突然の事故や認知症になって、自分ひとりで対応できなくなったときのために、なんらかの対策をとっておきたいと考えています。 遺言も考えていますが、亡くなったあとのことだけではなく、自分の生きている間のことも含めて対応するにはどうしたら良いでしょうか。 A:家族信託による収益不動産の管理について 遺言はご自身の亡くなったあとどうしたいかを伝えることのできるシステムなので、認知症などでご自身の意思がうまく伝えられなくなったり資産運営が難しくなった場合などに対応することができません。 認知症などで判断能力の低下が確認されると貯金などの資産や不動産が凍結されてしまいます。 Iさんがご健全なうちは問題ないのですが、ご心配されているように万が一認知症などの発症によりご自身で資産管理できなくなった場合、Iさんが所有されている賃貸物件の運営を娘さんが代行することはできません。 そうなると、賃貸物件の管理や修繕などもできませんし、新規契約だけでなく更新の手続きなども行うことができないのでとても大変なことになってしまいます。 そういった問題を回避できるのが【家族信託】です。 Iさんが元気な間はIさんが資産運用するが万が一の場合は娘さんに賃貸物件の運営を任せる旨など家族信託で指定しておけば、なにかあった場合に娘さんが迅速に対応することができます。 Iさんの介護費用が足りなくなった場合に賃貸物件を売却することなども可能です。 また、娘さん一人で管理を任されても心配だという場合も、資産を管理する管理者を誰にするかはIさんが自由に決めることができるので、賃貸運営は管理会社にお願いし、収益の管理は娘さんが行うなど、希望する状況に合わせて設定できます。 家族信託を取り決めておくことで万が一認知症が発症した場合でも資産を凍結されても管理運用していくことが可能です。 元気なうちに、みなさんで話し合ってより良い環境を整えることが大切です。
最終更新日 2022.05.31投稿日 2022.05.06
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家族信託
【家族信託】空き家の管理はどうすれば?
資産管理や運用で役に立つ家族信託ですが、実際どのように利用されているのでしょうか? いくつかご相談いただいたことをご紹介します。 Q:空き家になっている実家の管理に悩む、相模原市Bさんのご相談 相模原市在住です。遠くに住む母が散歩途中で転倒し股関節を骨折してしまいました。 高齢のため、骨折の手術後もしばらくは入院してリハビリが必要と診断されており、退院後も家事は負担になるだろうし今後は同居になる可能性はあると思っています。 母は回復したら実家に戻って一人で生活するつもりのようで、元気な間は実家の売却や建て替えは考えられないようです。 ただ介護が必要になった場合は、今私が住んでいる相模原市の家では手狭なため、同居するなら実家を建て替えて二世帯にすることなどは了承してくれています。 空き家になってしまうと傷むのも早いですし、同居するまでの間の賃貸契約も考えていますが、現状で考えておくべき対策などなにかあったら教えてください。 A:家族信託による空き家の管理対策 お母様の介護が必要となってからの資産運用にはいろいろと制限がついてきます。 万が一、お母様が認知症を発症した場合は特に大変です。 認知症が確定するとお母様の資産が凍結されてしまい、資産の名義人以外が資産を運用することができなくなります。 今回のお話では、実家の空き家を二世帯住宅に建て替えることを検討されているとのことなので、お母様が認知症を発症してしまったり、自己判断が難しいと判定された場合、Bさんがお母様名義の空き家を代理で建て替えることができなくなってしまいます。 ほかにも、空き家の修繕や賃貸契約などの管理、売却などの手続きもBさんが代理で行うことができません。 このような問題を回避できるのが【家族信託】です。 お母様が元気な間にBさんを家族信託で信託者に指定しておけば、もしも介護費用が足りなくなって実家を売却したくなった場合や、台風などの自然災害で空き家の屋根が壊れたから修繕しなければいけなくなった場合も、実家を放置しておくより賃貸にして運用したいと思ったときも、なにかあった場合に迅速にBさんが対応することができます。 資産を管理する管理者を誰にするかはお母様が自由に決めることができるので、Bさんが管理することなど含め、お母様の希望する状況に合わせて設定することができます。 もしもの場合を想定して、早めに家族信託を設定しておくことをおすすめします。 家族信託を取り決めておくことで万が一認知症が発症した場合でも資産を凍結されても管理運用していくことが可能です。 元気なうちに、みなさんで話し合ってより良い環境を整えることが大切です。
最終更新日 2022.05.31投稿日 2022.05.06
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家族信託
【認知症対策】家族信託で実家の管理をできるように対策した事例
資産管理や運用で役に立つ家族信託ですが、実際どのように利用されているのでしょうか? いくつかご相談いただいたことをご紹介します。 〈Q:遠方の実家の管理に困った、相模原市Aさんからのご相談例〉 元気だった母が先日突然亡くなってしまいました。 元から病院通いの多かった父なので、母がいなくなったいま親戚の勤めている病院の提携している介護施設への入居を考えています。 わたしは関西で結婚したあと新居を購入し、神奈川県の相模原市で別に生活しています。 実家は九州の山奥にあり、父は施設に入居してしまうと簡単に帰ることもできないだろうし、私も子供がまだ小さく、また遠方に住んでいるため実家の維持管理を手伝うのが難しいのですが、父は思い出の多い実家をすぐに手放すことは考えられないようです。 以前は病気がちでも母と二人で農作業を楽しんでいた父ですが、母が亡くなってからは出歩くことも減り、物忘れも多くなったようで精神的な部分も心配です。 父のこれからの生活や施設費、実家を維持する修繕費などを考えると、いざというときはわたしが実家の管理対策をとることになると思います。 そこで、認知症を発症してしまうと資産が凍結されてしまうという話を聞いたのですが、親名義の資産の管理は今後どうすれば良いのでしょうか? 〈A:家族信託による実家の管理対策〉 認知症を発症してしまうと、実家も資産も凍結されてしまいます。 お父様がご健全なうちは問題ないのですが、ご心配されているように万が一認知症などの発症によりご自身で資産管理できなくなった場合、代理人としてAさんが実家の売却などを代行しようとしてもできない場合があります。 そういった問題を回避できるのが【家族信託】です。 お父様が元気な間にAさんを家族信託で財産を管理する人(受託者)として指定しておけば、介護費用が足りなくなって実家を売却したい、台風で実家の屋根が壊れたから修繕したい、実家を放置しておくより賃貸にして運用したいなど、なにかあった場合に迅速に対応することができます。 また、Aさん一人で財産の管理を任されても心配だという場合も、資産を管理する管理者(受託者)を誰にするかはお父様が自由に決めることができるので、実家の管理運営はお父様のそばにいて介護に関与しているご親戚にお願いし、ほかに所有している資産などはAさんが管理することなどお父様や管理する人が希望する状況に合わせて設定できます。 家族信託で財産ごとに管理をする人(受託者)を取り決めておくことで、万が一認知症が発症した場合でも資産が凍結されることなく管理運用していくことが可能です。 元気なうちに、ご家族みなさんで話し合ってより良い環境を整えることが大切です。
最終更新日 2022.05.22投稿日 2022.05.06
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家族信託
不動産会社さまが家族信託スキームを業務に活用するメリット
不動産会社さまは、日常的に不動産オーナーや地主の方などから物件の収益管理や売却を任される機会があるでしょう。 高齢となったオーナー様から「将来、認知症などにかかって自分では管理できなくなったときの対処方法」についてご相談を受けるケースも多いのではないでしょうか? そんなときには「家族信託」による解決方法を提案されると喜ばれる可能性があります。 今回は不動産会社さまが顧客に対し、普段の業務において家族信託を活用されるメリットを解説します。 顧客へより上質なサービスを提供し、御社自身も業務の範囲を広げて信用を獲得できる方法ですので、ぜひとも取り入れてみてください。 家族信託を不動産業務に活用する方法 不動産関連業務に家族信託を活用するには具体的にどういった方法があるのか、みてみましょう。 そもそも家族信託とは 家族信託は、信頼できる家族に財産を預けて管理処分してもらう信託契約です。 不動産会社様の顧客の場合には、顧客(オーナー様)がご本人のご家族へ所有する不動産を信託することになります。 預けられた不動産は信託契約の目的に従って受託者(預かった人)が管理、運用、処分します。所有者であるオーナー様が認知症になったり大病を患ったり死亡してしまったりしても、家族信託を設定していれば大きな混乱や損失を回避できるメリットがあります。 家族信託を賃貸管理に活用する事例 家族信託を不動産の賃貸管理に活用する事例をご紹介しましょう。 Aさんは多数の収益物件を所有していますが、70代となり高齢です。自分ですべての物件を管理するのは負担が重くなり、対処方法に悩んで不動産会社へと相談されました。 不動産会社は家族信託を提案。Aさんは長男へ物件管理を委託し、物件は長男が管理してくれることになりました。 受益者はAさんとしたので、Aさんはこれまでとおり家賃を受け取り続けることができます。 Aさんが認知症になっても信託の効果が持続するので物件がきちんと管理されますし、Aさんの死後の財産帰属者を長男に指定しておけば長男がそのまま物件を相続できるので関係者が全員納得できる結果となりました。 家族信託を不動産売却に活用するパターン 家族信託は不動産の売却にも利用できます。 Bさんは70代と高齢になっており、将来介護施設へ入居する際には所有物件の一部を売却して資金に充てたいと考えていました。しかしその頃には体力や精神力が低下していて、自分では売却活動ができなくなっているかもしれません。 そこで今のうちに対策を練りたいと考えて不動産会社へ相談されました。 不動産会社の提案により、家族信託を利用して子どもに物件の管理処分を委ねる契約を締結しました。これにより、将来Bさんが介護施設へ入居する際には子どもに物件を売却して介護施設への入居手続きを行ってもらえる準備を整えることができて、Bさんも安心されました。 以上のように、オーナーさまが高齢になって自分では物件の管理や売却などの対応が難しくなったときでも、家族信託を利用すれば売却や買換え、新築や建替え等をスムーズに行えますし、必要に応じて相続税対策も可能です。 不動産会社が家族信託を活用するメリット 不動産会社さまが顧客へ家族信託の提案をするコンサル業務を行うと、以下のようなメリットがあります。 高齢となった不動産オーナーの不安を解消できる オーナー様が認知症になってしまったら、不動産の活用はストップしてしまいます。 認知症になると、ご本人では有効な契約締結ができません。かといって子どもなどの親族が勝手に代理することもできないからです。裁判所で成年後見人をつけても硬直的な運用となり、柔軟な資産運用は困難となるでしょう。 御社の顧客にも「将来認知症になったら資産管理はどうなるのか?」と心配している高齢の不動産オーナー様が数多くいらっしゃるのではないでしょうか? 家族信託を利用すれば収益物件の適切な管理、運営、購入や建替えなどすべてのニーズに柔軟に対応できるので、オーナー様の不安も解消できて、不動産会社としても信頼を得られるメリットがあります。 次世代オーナーとの関係を構築できる 家族信託で不動産の管理や処分を委ねられる「受託者」や、現オーナーの死亡後の「受益者」、最終の「帰属権利者」は「次世代の不動産オーナー」となる可能性の高い方です。 家族信託を設定すると、不動産会社としてもこういった後継者と密接にやり取りをするので、良質な関係性を構築して継続的な契約につなげることができます。 他社との差別化 家族信託を取り入れている不動産会社はまだまだ少数です。 先駆けて家族信託を業務に取り入れコンサルを行うことにより、他社と差別化して御社の価値を高められるでしょう。 不動産会社が家族信託の仕組みを理解し顧客へ価値を提供できれば、顧客と御社の両方にとって大きなメリットとなります。 「家族信託」の注意点 「家族信託」を利用する際には注意点もあります。 家族信託には専門的な知識が必要 家族信託は「信託契約」という契約行為の一種です。法的な知識をもって適切な方法で設計しないと、期待していたような効果を発生させられません。 たとえば「誰を受託者、受益者とするのか」「どの資産を預けてどのような方法で管理処分させるのか」「最終的な帰属権利者を誰にするか」など、将来を見据えて的確に判断する必要があります。 浅い知識しかないのにお客様に適当な提案をして迷惑をかけてしまったら、将来的にクレームがきて信用を失ってしまうでしょう。家族信託を業務に取り入れるには、信託契約についての正確な知識とスキルをもっている専門家に相談しながら進める必要があります。 ご家族への説明と理解が不可欠 家族信託には委託者、受託者、受益者という3者が登場しますが、これらの方以外の親族にも説明を行い、理解を得ておくべきです。 親族が納得していない場合、後に親族同士でトラブルになったり「遺留分侵害額請求」などのトラブルが生じたりする可能性もあるからです。 不動産会社側がこういった配慮をきちんとしなければトラブルに巻き込まれたり、顧客のご家族に不幸をもたらしてしまったりするリスクがあるので注意しましょう。 家族信託で失敗するパターン 家族信託に失敗するパターンには以下のようなものがあります。 公正証書を作成しなかった 不動産会社の勧めによって家族信託を利用したが、不動産会社が指示しなかったために公正証書を作成しなかった →金融機関で「信託口口座」を開設できないといわれたり、家族信託の効果を争われたりする可能性があります。 リーガルチェックが不十分だった 不動産会社が司法書士などの専門家によるリーガルチェックを受けずに書式などを使って適当に信託契約書を作成してしまった →契約書に不備があり、信託登記ができない可能性があります。結局契約書を大幅に修正しなければならないと、オーナー様からの信頼を失ってしまうでしょう。 親族トラブルが発生した 家族会議をせずに不動産会社主導で家族信託を実行してしまった →後に受託者以外の子どもが家族信託を知って驚き不動産会社にクレームが来る可能性があります。家族関係が壊れてしまい、当該不動産会社へは継続的に依頼せず別の会社へ管理契約を移されるリスクも高まるでしょう。 安全に家族信託を活用するために 不動産会社さまが安全に家族信託を活用するため、専門家との業務提携をお勧めします。 司法書士が顧客から聞き取りを行ってニーズを把握し、契約書を作成すれば不手際が生じるリスクはほとんどありません。複雑な信託登記にも司法書士が対応いたします。 顧客やそのご家族様の信頼感も高まるでしょう。 当事務所は相続コンシェルジュとして相模原、町田エリアを中心に相続や信託に関する支援を継続して行ってきました。認知症による資産凍結に備えた対策方法も把握しております。地元の不動産会社さまとの連携体制も強めていければと考えていますので、関心をお持ちの方がおられましたらお気軽にお問い合わせください。
最終更新日 2022.05.30投稿日 2022.05.06
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家族信託
家族信託利用の流れ、必要書類
認知症になったときの財産管理や相続対策として、最近家族信託が注目を集めています。 ただ遺言書などと比べると、まだまだ具体的なイメージを持っていない方も多いのではないでしょうか? 今回は家族信託を利用する場合の手続きの流れや必要書類をわかりやすく解説します。 高齢になったときの預貯金や不動産管理、死後の相続問題に不安を抱えている方はぜひ参考にしてみてください。 家族信託の利用の流れ 家族信託を利用したいときには、以下のような手順で進めましょう。 悩みを明確化する まずは「悩み」や「問題」を明確化しましょう。 家族信託は、さまざまな目的で利用できるので「家族信託によってどういった問題を解消したいのか」を考えておく必要があります。 以下のようなケースであれば効果的に問題解決できる可能性が高いので、参考にしてみてください。 将来、認知症になったときに備えて財産を安全に管理できる体制を整えておきたい 資産家で、自分が高齢になったときに資産管理運用ができなくなるのではないか、不安 円滑に事業承継したい 障害のある子どもがいて、親なき後の生活に不安を感じている 夫婦のみの家庭で子どもがいないので、遺産をどのように後の世代に残していくか迷っている 長男に子どもがいないので、長男に財産を継がせた後は次男の子ども(孫)に財産を継がせたい 内縁の配偶者がいる場合の遺産相続対策 子どもたちが遺産相続トラブルを起こさないようにしたい まずはどういった悩みを抱えているのか、何を解決したいのかを具体的に考えてみましょう。 専門家に相談する 悩みが明確になったら、専門家へ相談しましょう。 家族信託は自分たちだけでも設定できないわけではありません。 しかし契約関係が非常に複雑で登記などの手続きを要するケースも多数です。自分たちだけで契約書を作成しても不備が生じてしまう可能性があります。 安全かつ確実に家族信託を利用するため、まずは相続対策や家族信託に積極的に取り組んでいる司法書士や弁護士などの専門家に相談してみてください。 信託の目的や契約内容を決定する 具体的に家族信託によって何を実現したいのか「目的」を決定します。 たとえば「認知症で判断能力が失われた場合に備えて預貯金や不動産を長男に託す」などです。 また家族信託契約を締結するときには「委託者」「受託者」「受益者」の3者と信託財産を決めなければなりません。 委託者…財産を預ける人 受託者…財産を預かって管理運用処分する人 受益者…財産管理によって利益を受ける人 信託財産…預ける財産 上記の「スキームの組み方」によって目的を効果的に実現できるかどうかが大きく異なってきます。 専門家のアドバイスも受けながら、目的実現のために最適な方法を策定しましょう。 信託契約書を作成する 家族信託の基本的なスキームが決まったら、「信託契約書」を作成します。口約束では家族信託はほとんど意味をなさないので注意してください。 家族信託の契約書に定まった要式はありません。個別のケースに応じて適切な内容を盛り込んでいく必要があります。 自分たちでネット上に落ちている「テンプレート」や「雛形」をそのまま流用すると、効果が半減あるいはまったく失われてしまうリスクも発生するので注意しましょう。 契約書作成の際には必ず家族信託に詳しい専門家に依頼するようお勧めします。専門家に作成を依頼すると自分たちで契約書を作成する必要がありません。当事者ができあがった契約書の文案をチェックして、間違いがなければ署名押印するだけで契約書が完成します。 契約書を公正証書にする 信託契約書が完成したら公正証書にしましょう。 確かに法律上、信託契約書の公正証書化は必須ではありません。しかし「リスク」を減らしたいなら公正証書にすべきです。 たとえば後になって受託者が「そんな契約書に署名押印した覚えはない」などと言い出すと、契約が無効になってしまうおそれがありますし、紛失してしまうリスクも心配です。 公正証書であれば公証役場で公証人が本人確認や意思確認をして作成するので、「作成したおぼえはない」などとは言い出しにくくなります。原本が公証役場で保管されるので、紛失のおそれもありません。 当事務所が関与する場合、公正証書化のサポートも行いますので、よければご相談ください。 信託財産の名義変更、登記 信託財産の中に不動産や株式など資産が含まれていたら、「受託者名義」に変更する必要があります。 不動産の場合、法務局で登記申請しなければなりません。 なお信託登記を行っても所有権が移るわけではないので、委託者には所有権が残ります。 委託者自身が受益者となる場合には贈与税も発生しません。 信託財産に不動産が含まれている場合 信託財産に不動産が含まれている場合の「信託登記」は通常の所有名義の変更登記と比べても難易度が高めです。 自分たちで対応すると大変な手間がかかりスムーズに名義変更できないケースも多いので、専門の司法書士に依頼しましょう。 財産管理用の信託口座を開設する 信託財産に現預金が含まれている場合、受託者が管理するために専用の銀行口座を開設する必要があります。 受託者が預金を管理するときには、受託者本人の資産と分けて管理しなければなりません。かといって、委託者名義の口座を受託者が扱うのは困難です。 そこで「財産管理専用」の口座を作る必要があります。 金融機関で財産管理専用口座を作ったら、委託者名義口座から信託用の口座へ定められた金額を送金しましょう。 財産管理を開始する 契約書作成、名義変更登記、信託口座の開設や送金が済んだら家族信託の「準備」が完了します。 その後は受託者が契約で定められた目的に従って財産管理や運用、処分を進めていきます。 契約内容によっては、委託者の死後にも効力を継続させ「遺言書代わり」に利用することも可能です。 家族信託を専門家に相談するときの必要書類は? 家族信託を司法書士などの専門家に相談するときには、以下のような書類を用意すると話がスムーズに進みやすくなります。 身分証明書 運転免許証や保険証などの身分確認書類です。 家族関係を表にしたもの ご本人と配偶者、お子様、ご両親や孫、おじおば、甥姪など、信託契約に関連しそうな親族関係がまとまった表があると、専門家に状況や悩みの内容を伝えやすくなります。 預けたい資産に関する表や資料 預金や不動産、株式など、どういった資産がどのくらいあるのかまとめておくとよいでしょう。 困っていること、悩んでいることを記載したメモ 将来の財産管理が心配、相続トラブルが心配など、具体的な悩みの内容や専門家に相談したい内容をまとめておきましょう。 印鑑 書類ではありませんが、相談事に家族信託の依頼をする可能性があるので、委任契約書に押印するための印鑑も持参するようお勧めします。 家族信託の公正証書や登記に必要な書類 家族信託で「公正証書を作成するとき」と「不動産登記を行うとき」には以下のような書類が必要です。 公正証書を作成するための必要書類 契約当事者に関する本人確認書類 運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどです。 信託財産に関する資料 不動産の登記事項証明書、固定資産税評価証明書、銀行通帳などです 印鑑 不動産登記の必要書類 登記申請書(司法書士が作成します) 委託者と受託者の印鑑登録証明書 受託者の住民票または戸籍附票 信託不動産に関する登記済証または登記識別情報 登記原因証明情報 「信託目録」に記載すべき情報 固定資産評価証明書または固定資産税の課税明細書 司法書士への委任状 具体的には公正証書作成時、登記申請時にそれぞれ司法書士が指示をしますので、適宜集めていただければ問題ありません。 相模原、町田の家族信託はお任せください 家族信託を利用する際には、まずは目的を定めて専門家に相談するところから始めましょう。相模原や町田エリアで財産管理や相続の専門家をお探しの方はぜひとも一度、ご相談ください。
最終更新日 2022.05.30投稿日 2022.05.06
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家族信託
家族信託を利用すべき6つのパターン
高齢になったときの財産管理や相続対策として「家族信託」を検討するご家庭が増えています。 ただ「家族信託に関心はあるけれど、自分たちの状況で利用できるのかわからない」方も多いでしょう。 そこで今回は、家族信託を利用すべきケースや具体的な状況を6つ、ご紹介します。 家族信託に関心を持っていて詳しい内容を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。 家族信託とは 家族信託は信頼できる家族に財産を預けて管理運用や処分をしてもらう信託契約です。 委託者は受託者に信託財産を預け、指定したとおりに管理や処分を行ってもらいます。 【家族信託に登場する基本的な用語】 委託者…財産を預ける人 受託者…財産を預かって契約に従い管理運用処分する人 受益者…家族信託によって利益を受ける人 信託財産…預けられる財産 たとえば親が委託者となり子どもを受託者として、不動産などの財産を預けて管理してもらうのが、家族信託の典型例となります(他にもいろいろな活用方法があります)。 以下で具体的にどういったケースで家族信託を活用できるのか、みていきましょう。 認知症対策 今は元気だけれども将来認知症になったときの財産管理が心配なら、家族信託が有効です。 認知症が進行すると、ご本人は自分の意思で財産を管理できなくなります。意思能力が失われるため、有効な契約ができません。たとえば介護施設に入居するために家を売却して資金を作りたいとき、認知症にかかってしまっていたら売却活動ができないので、必要なお金を用意できない可能性があります。 生活費のために預金を使おうとしても自分では出金するのが難しくなるでしょうし、子どもには代理権がないので勝手に入出金や振り込みなどができません。 このようなとき、事前に家族信託によって子どもに財産を託していたら、子どもが不動産の管理や売却、預貯金の入出金や振り込みなどの手続きを進められます。 親が認知症になっても安心して生活するため、家族信託を活用しましょう。 高齢になったときの資産管理 不動産オーナーや株式取引をしている方など、資産を持った方にも家族信託がおすすめです。 資産家の方が高齢になると、自分で管理運用するのが難しくなるものです。認知症にならなくても、多種多様な資産の状況を的確に把握してそれぞれに関して適切な運用を行うのは体力的にも精神的にも厳しくなるでしょう。 元気なうちに信頼できる家族に資産を預けて管理運用を任せれば、自分が年をとってしんどくなっても安心です。委託者自身を受益者としておけば、株式の配当金や収益物件からの賃料などは委託者が受け取れます。 死亡したときには指定した人に財産を受け継がせることができるので、遺言書代わりにも使えるメリットがあります。 資産家の方が財産管理に自信をもてなくなってきたら、早めに家族信託を設定しましょう。 障害をもった子どものための財産管理 障害をもったお子様がおられると、ご両親は自分たちの亡き後が心配になるものです。 お子様が自分で預金などの管理ができない状態では、一括で財産を与えても親亡き後の生活は保障されません。 そんなときには家族信託が有効です。たとえば障害をもったお子様のご兄弟(別の子ども)や孫、甥姪などの親族に資産を預け、障害をもったお子様のために管理運用してもらいましょう。毎月継続的に支出や収益を管理してもらうことも可能です。 そうすればご本人で財産管理しなくてもよいので、重度の障害を抱えた方であっても生活が守られやすくなります。 2代先以降の相続方法の指定 財産承継を考えるときには、遠い将来を見据えるべきケースがあるものです。 夫婦のみの資産承継 たとえば子どもがおらずご夫婦のみのご家庭では、夫が死亡した後に妻に財産を受け継がせたい要望があるものです。ただし妻が死亡した後は妻側の親族ではなく、できれば夫側の親族に資産を受け継がせたいことも少なくありません。 また夫が再婚で前妻との間に子どもがいれば、妻の死亡後に「前妻との子ども」に資産を受け継がせたい場合も考えられます。 こういった状況において夫が妻へ財産を遺す旨の遺言書を作成しても、希望は実現できません。妻の死亡後は妻側の親族(親や兄弟)に引き継がれてしまうからです。遺言書では2代以上先の遺産相続方法を指定できません。 長男に子どもがいないときの資産承継 長男に子どもがいない場合にも、同様の問題が起こります。親としては、まずは財産を長男に相続させ、その後は次男の子ども(孫)に財産を引き継がせたい場合などもあるでしょう。 しかし遺言書で長男に財産を承継させると、後は長男がどのように対処するかわかりません。全額を慈善団体などに寄付されてしまう可能性もありますし、突然現れた交際相手に遺贈してしまう可能性もあるでしょう。 このように遺言書の効果は一代限りなので、2代先以降の財産引き継ぎ方法を指定できない限界があります。 家族信託なら2代以降先の財産引き継ぎ方法を指定できる 家族信託であれば、2代先以降の財産引き継ぎ方法を指定できます。 自分の後は妻、その後は自分の兄弟や前妻の子ども、その後は孫、など3代に及ぶ指定も可能となっており、柔軟に対応できるのは大きなメリットです。 ご夫婦のみでお子様のいないご家庭、ご長男に子どもがいないご家庭、直系の血族に財産を引き継いでいきたい方などは、ぜひ家族信託を検討してみてください。 事業承継 家族信託は、事業承継にも非常に有効です。 事業承継の際には、以下のような問題に対応しなければなりません。 株式の移転 経営権の移転 後継者候補に経営者としての脂質があるかどうかの見極め いずれは株式を後継者へ移転すべきですが、いきなりすべての権限を移譲すると不安を感じる先代経営者も多いのではないでしょうか? また後継者に経営者としての資質がない場合には、株式や経営権の譲与を取り消すべき場面も考えられます。しかしいったん株式を贈与してしまったら、契約解除は簡単ではありません。 株式を贈与すると、配当金などは後継者の元に入るので、全経営者は利益を得られなくなってしまいます。 こんなとき、家族信託を利用すると、前経営者にも権利を残したまま株式だけを暫定的に移転できます。株式を信託するとき、受益者を前経営者としておけば、配当金は前経営者が受け取れるのです。「指図権」という権利を残しておけば、株主総会決議などの際に前経営者が権利行使できます。 また後継者に経営の資質がない場合には、信託契約を解除して株式を取り戻すことも可能です。 このように事業承継時には家族信託が非常に有効なので、中小企業経営者の方などはぜひ一度ご検討ください。 不動産をめぐる相続トラブルの防止 不動産を所有している方は、死後の遺産相続トラブルに注意しましょう。不動産が遺されると、相続人たちの間で意見が合致せず遺産分割協議で決裂してしまうケースが非常に多いためです。 たとえば1人の相続人が「売ってお金で分けたい」と主張しても、別の相続人が「不動産は売りたくない」というかもしれません。意見が合わないので「共有」にするケースもありますが、その場合にも「将来の共有トラブル」につながります。共有物件は共有者同士で合意しないと活用や処分ができないので、結局は話し合いが必要となってしまうのです。トラブルが激化すると裁判になるケースも少なくありません。 こういった不動産をめぐるトラブルは、家族信託によって予防できます。 たとえば子ども3人が相続人となる場合、長男に不動産を預けて他の子供達を受益者としておけば、長男が他の子供達のために不動産を管理します。収益の配分方法も指定しておけば、子供達3人が平等に収益を得られるので不満は出ません。 遺産分割協議を行う必要もないので、「売却したい相続人」と「不動産を残したい相続人」との間で意見対立が起こるリスクも発生しないでしょう。 不動産が遺されると、たとえ実家の土地建物だけであっても大きなトラブルになるケースが多々あります。もしも相続財産の中に1つでも不動産が含まれているなら、家族信託を検討しましょう。 相模原、町田の家族信託はお気軽にご相談ください 家族信託の設定は複雑で登記なども必要となるので、専門家の関与が必要です。相模原・町田エリアで相続の専門家をお探しの方がおられましたら、相続コンシェルジュの司法書士へお気軽にご相談ください。
最終更新日 2022.05.30投稿日 2022.05.06
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家族信託
成年後見制度と家族信託の違い
将来、認知症にかかった場合に備えるには、元気なうちに財産管理についての対策をしておく必要があります。 認知症になってしまってからでは有効な対策ができないので、早めに開始しましょう。「まだまだ元気だから大丈夫」と考えて後回しにすると、高いリスクを背負ってしまいます。 認知症になった後の財産管理方法としては「成年後見制度」と「家族信託」の2種類があります。 今回は成年後見制度と家族信託の違いを相続対策の専門家が解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。 【成年後見制度と家族信託の違い 一覧表】 成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。 まずは法定後見、任意後見、家族信託の違いを一覧表で確認しましょう。 成年後見…本人の判断能力が低下してから親族などの申立によって裁判所が「後見人」を選任する制度 任意後見…本人が判断能力を失う前に、自分で選んだ任意の人と「任意後見契約」を締結し、契約にもとづいて後見人が財産管理等を行う制度 法定後見 任意後見 家族信託 本人が財産管理人を選べるか 選べない 選べる 選べる 認知症になった後でも設定できるか できる できない できない 裁判所の監督を受けるか 受ける 受ける 受けない 本人を保護するための管理者の権限 同意権や取消権がある 同意権や取消権はない 同意見や取消権はない 報酬 専門家が選任されると報酬が発生する 契約によって定める(無報酬も可) 契約によって定める(無報酬も可) 財産の積極的な運用、柔軟な対応 難しい 難しい 可能 有効となる期間 本人が死亡するまで 本人が死亡するまで 本人の死亡後も継続可能 身上監護権の有無 あり あり なし 以下で、それぞれの項目について詳細をみていきましょう。 本人が財産管理人を選べるか 成年後見の場合、本人の判断能力が低下してから家庭裁判所によって後見人が選任されるので、本人は自由に後見人を選べません。弁護士や司法書士などの専門家が選任されるケースも多々あります。 任意後見や家族信託の場合には本人が元気なうちに自分で後見人や受託者と契約するので、将来財産を預ける人を選べます。 認知症になった後でも設定できるか 成年後見は「本人が判断能力を失った後」に親族等の申立によって後見人を選任する制度なので、認知症が進行した後でも設定できます。むしろ元気なうちは後見人が不要なので、成年後見制度を利用できません。 一方、任意後見や家族信託は「契約」なので、本人に十分な意思能力が必要です。認知症が進行してしまったら、これらの方法は利用できなくなる可能性が高いと考えましょう。 裁判所の監督を受けるか 成年後見や任意後見の場合、家庭裁判所による監督を受けます。 法定後見人は家庭裁判所や後見監督人に監督されますし、任意後見人は「任意後見監督人」という人によって監督されます。 そこで定期的に裁判所へ財産や収支の状況を報告しなければなりません。 たとえ「本人のために良いこと」であっても、自分の考えで自由に行動するのも困難になる可能性があります。 家族信託の場合、受託者は裁判所による監督を受けません。裁判所へ報告をする必要はありませんし、定められた権限の範囲内であれば受託者の判断で財産処分もできます。 ただし家族信託の場合でも、任意で「信託監督人」などの監督者をおけるので、受託者の独断が心配な場合にはそういった制度を利用しましょう。 本人を保護するための管理者の権限 法定後見人には本人を保護するための強い権限が認められます。成年後見人が同意していないのに本人が勝手に契約などの行為をした場合、成年後見人が取り消せます。これを「取消権」といいます。 任意後見人には同意権や取消権がないので、本人が勝手に締結した不利益な契約を無効にできません。家族信託の場合にも、受託者にはこれらの権限が認められません。 本人を保護する手段としては、法定後見制度がもっとも有効といえるでしょう。 報酬 法定後見の場合、後見人は家庭裁判所へ「審判」を申し立てると後見事務を行っていた期間に対応する報酬をもらえます。報酬は本人の財産から差し引かれ、金額の相場は月額2~6万円程度となっています。 専門家が後見人になった場合はもちろんのこと、親族が後見人になった場合にも報酬を請求できます。 任意後見の場合、任意後見人への報酬は契約によって定めます。任意後見人が納得すれば「無報酬」にも設定してもかまいません。 ただし任意後見人が業務を行う際には必ず「任意後見監督人」が選任されます。任意後見監督人には月額1~2万円程度の報酬が払われるので、完全に無報酬にはできません。 家族信託の場合、契約によって受託者の報酬を定められますが、無報酬にしてもかまいません。裁判所の監督は受けないので、監督人などへの報酬も不要です。 財産の積極的な運用 認知症になった後も、本人が所有している不動産や株式などを積極的に運用したいニーズがあります。 しかし成年後見制度や任意後見制度の場合、財産の積極的な運用や処分は困難となります。 これらの制度は「本人を保護する」ことに主眼をおいており、リスクが発生する行為は極力控えるべきと考えられているからです。 重要な財産の処分には裁判所の許可が必要になりますし、リスクを伴う積極的な投資など「本人が生活するのに不要な行為」は認められない可能性が高いでしょう。 たとえば合理的な理由もないのに不動産を処分したり株式の売り買いをして運用したりするのは困難です。 家族信託の場合、裁判所による監督が及ばないので、受託者が与えられた権限内において自由に財産の処分や運用ができます。 親族への柔軟な対応 本人が認知症になった後でも、子どもや孫に生前贈与をしたり介護施設に来るための交通費、手当を渡したりするニーズがあるものです。しかし成年後見制度を利用していると、こういった対応が難しくなる可能性があります。 生前贈与は本人の財産を目減りさせてしまいますし、子どもが介護施設を訪ねてくるのに本人が手当や交通費を払う必要はない、と考えられるためです。 後見人が選任されると、たとえ子どもであっても親からお金を受け取るのが難しくなるケースが多数となります。 家族信託の場合であれば、受託者が親族に手当や交通費を支払ったり孫にお年玉を渡したりなど、柔軟に対応できます。 より本人の希望に沿った対応を実現しやすくなりますし、家族の方も困惑せずに済むでしょう。 有効となる期間 法定後見であっても任意後見であっても、本人が死亡すると終了します。 死亡と同時に後見人は財産管理する権限を失うので、死亡時を基準に財産管理体制が分断される結果になります。たとえば銀行預金は死亡と同時に凍結され、相続人が遺産分割協議を成立させるまで全額の出金は難しくなるでしょう。 家族信託は、本人が死亡しても存続させられます。死亡時を基準に財産管理体制が崩れてしまわないので、スムーズに財産管理や相続手続きを進めていけるメリットがあります。 また本人の死亡後は配偶者を受益者とし、配偶者の死亡後は子どもを受益者とするなど遠い将来の財産管理についての設定も可能です。 身上監護権の有無 身上監護権とは、本人の身の回りの監護状況を調整する権利です。本人の生活状況や心身の状態に鑑みて、最適と考えられる方法で療養や健康管理、生活支援などを行います。 後見人には本人の身上監護権があるので、病院への入所、介護施設との契約や入退去、リハビリなどについて決定できます。 家族信託を利用した場合の受託者には身上監護権がありません。 認められるのは、基本的に信託財産を管理処分する権利です。ただ、家を売却して介護施設に入所するお金を用意するなど、財産管理処分にかかわる内容なら対応できます。 また受託者となる家族は、委託者である本人が介護施設や病院へ入退去する際の「キーパーソン」となるケースが多いでしょう。現実には家族として身上監護を行っていく可能性が高いと考えられます。 まとめ 成年後見制度と家族信託は似ていますが、さまざまな違いもあります。高齢になったときの財産管理や死後の相続手続きをスムーズに進めるため、両者をうまく使い分けましょう。 当事務所は相模原、町田の地域で相続コンシェルジュとして多くの方の財産管理支援や相続対策に携わってまいりました。お悩みごとがありましたら、まずはお気軽にご相談ください。
最終更新日 2022.05.30投稿日 2022.05.06
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家族信託
遺言と家族信託の違い
将来の遺産相続に備えるには、遺言書を作成する方法と家族信託を利用する方法があります。 この2つは似ている点もありますが、それぞれ要件や実現できることが異なるので、状況に応じて適切に使い分けましょう。 今回は遺言と家族信託の違いを町田、相模原の相続専門家が解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。 【遺言と家族信託の違い 一覧表】 遺言 家族信託 厳格な要式が必要か 必要 不要 本人の意思のみで成立するか 成立する 成立しない 2代先以降の相続を指定できるか できない できる 子どもの認知や相続人の廃除などの身分行為 できる できない 残された子どもを守るための対応 難しい 適している 生前の財産管理ができるか できない できる 以下でそれぞれの項目について詳しくご説明します。 厳格な要式が必要か 遺言は厳格な「要式行為」です。通常時に作成できる遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、それぞれ法律の定める作成方法があります。 たとえば自筆証書遺言は、遺産目録以外のすべての部分を遺言者が自筆しなければなりません。加筆訂正の方法などにも法律の定める複雑なルールがあります。要式を守らないと遺言書が全体的に「無効」になってしまうので、作成した意味がありません。 死後に相続人間で遺言書の効果が争われ、トラブルになるケースも多く、注意が必要です。 一方、家族信託は遺言のような厳格な要式行為ではありません。「信託契約」という一種の契約であり、遺言書に比べて無効になるリスクは相当低くなります。死後に家族信託契約の有効性が問題になってトラブルになるケースもあまりありません。 本人の意思のみで成立するか 遺言書は、「遺言者1人の意思」によって作成できます。たとえば誰かに財産を遺す場合であっても、相手の承諾は不要です。誰にも知られず、1人で作成、保管してもかまいません。 一方で、誰かに財産を遺しても死後に「遺贈の放棄」をされる可能性があります。「遺贈の放棄」をされたら、対象者には財産が移転しないので、遺言者の希望通りに財産を受け継がせることはできません。 家族信託は委託者と受託者の契約なので、委託者の意思のみでは成立させられません。受託者が納得しなければ財産を預けて管理してもらえませんし、受益者や信託財産の内容、財産管理の方法なども両者で話し合って決める必要があります。 その代わり、いったん契約が成立したら受託者側の一方的な都合で簡単には義務を放棄できません。この意味で、家族信託の方が委託者の希望を実現しやすいといえるでしょう。 2代先以降の相続を指定できるか 遺言と家族信託の大きな違いとして「2代先以降の相続(財産帰属先)を指定できるか」という問題があります。 遺言書の場合、遺言者の次の世代までの相続方法しか指定できません。たとえば夫婦に3人の子どもがいて、夫が遺言書で妻に全財産を残したケースを考えてみましょう。夫としては、できれば妻が死亡したら長男に財産を受け継がせたいと考えています。しかし遺言書によって相続人を指定できるのは、「夫から妻への相続」のみです。妻が誰に遺産相続させるかは、妻自身が自由に決められます。たとえ夫の生前に妻が「財産は長男に受け継がせる」と約束して遺言書を書いていても、夫の死後に妻が遺言書を書き換えれば効果は失われます。 このように、遺言書では「2代先以降の相続」は指定できません。 家族信託であれば、2代先以降の財産の受け継ぎ方を指定できます。たとえば先の例では、夫が長男と信託契約を締結し、受益者を妻に設定すればよいのです。 夫が死亡した後は妻のために財産を管理してもらえば、妻が困る心配は要りません。妻が死亡した後の最終的な財産帰属先を長男としておけば、「夫→妻→長男」の順番で財産を受け継がせられます。2代先に限定されず、3代にわたる財産受け継ぎ方法を指定してもかまいません。このように、2代先以降の財産受け継ぎ方法を指定する家族信託を「受益者連続信託」ともいいます。 受益者連続信託を上手に使えば、直径血族以外の人(配偶者の親族など)へ財産が相続されるのを防げますし、他にもさまざまな活用方法があります。 受益者連続信託は、家族信託を利用する大きなメリットの1つといえるでしょう。 子どもの認知や相続人の廃除などの身分行為 遺言をすると、子どもの認知や相続人の廃除などの身分行為ができます。たとえば生前に認知すると家族との間でトラブルが起こりそうな場合、遺言書によって子どもの認知をする方法が有効となるでしょう。 相続人の廃除とは、被相続人を虐待するなど非行のある相続人から相続権を奪う手続きです。生前に廃除の手続きをとるとトラブルになるケースも多いので、遺言書で廃除をする方法が役に立ちます。遺言書により、相続人の廃除を取り消すことも可能です。 家族信託の場合には、こういった身分行為はできません。身分行為を行いたい場合には、遺言書を作成する必要があります。 残された子どもを守るための対応 小さい子どもや障害のある子どもを残して死亡する場合には、遺言書よりも家族信託が有効となる可能性があります。 以下では子どもが未成年の場合と障害がある場合に分けて、遺言書と家族信託それぞれの効果をみてみましょう。 5-1.子どもが未成年の場合 たとえば妻が夫と子どもを残して死亡するケースを考えてみましょう。夫には浪費癖があるので、妻は子どもにすべての財産を遺す遺言をしました。しかし妻が亡くなると夫が「法定代理人」として子どもの財産を管理します。夫に浪費癖があると、せっかく子どもに残した財産を使い込んでしまうかもしれません。そうなったら子どもの生活が守られなくなってしまうでしょう。 家族信託であれば、夫以外の信頼できる親族に財産を託し、子どものために使ってもらえます。 子どもに障害がある場合 重度の障害を持った方は、自分では財産を適切に管理するのが難しいケースも少なくありません。 子どもに障害がある場合に遺言書を書いて子どもに全財産を相続させると、財産が子どもに一括で受け継がれてしまいます。子ども自身がうまく財産を管理できなければ、子どもの生活は守られません。 このような場合、家族信託を利用して信頼できる親族にお金を託し、子どもを受益者とする方法が有効です。受託者となった親族が子どものために生活費やその他の必要費用を管理してくれるので、子どもの生活が守られます。 以上のように小さい子どもや障害のある子どもを残して死亡する場合、遺言書のみでは対応が不十分となるケースが多々あります。家族信託を有効活用しましょう。 生前の財産管理ができるか 遺言書によって指定できるのは、死後の財産相続方法や死後の身分行為の変更などです。そもそも遺言書は「死後に効力を発生させるもの」なので、生前の財産管理には使えません。高齢になって認知症などにかかり、自分で適切に財産管理できなくなったときの対応は遺言書ではできないのです。 家族信託は、生前の財産管理にも使えます。たとえば親が元気なうちに長男に住居の不動産や預貯金を預けておけば、親が認知症になった後も適切に管理してもらえます。投資用の物件、株式なども預けて運用してもらえるので、年をとって自分では資産運用が難しくなっても継続的に資産を増やしていけるでしょう。 このように、生前の財産管理ができるかどうかについても遺言と家族信託で大きな違いがあります。生前からしっかり財産管理を行っておけば、死後の相続トラブルも防ぎやすくなるでしょう。 まとめ 遺言書と家族信託は、「死後に財産を受け継がせる方法を指定できる」という大きな意味では同じ効力があるといえますが、実際にはまったく異なる手続きです。要件、方法や効果が違うので、状況に応じて適切に使い分ける必要があります。 遺言書を作成するときも家族信託を利用するときも、専門家によるサポートがあればトラブルや無効になるリスクを避けやすく、安心していただけるでしょう。当事務所はこれまで、相模原や町田エリアで相続対策に力を入れて取り組んで参りました。生前の財産管理や死後の相続対策に関心のある方は、一度お気軽にご相談ください。
最終更新日 2022.05.30投稿日 2022.05.06
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家族信託
家族信託の8つのメリットと5つのデメリット
生前の認知症対策や死後の財産管理処分の際に活用できる家族信託は、とても便利で徐々に認知度も高まっています。 ただし家族信託にはメリットだけではなくデメリットもあります。利用を検討する際には、リスクや限界も把握しておく必要があるでしょう。 今回は家族信託のメリットとデメリットを相模原・町田の司法書士が解説しますので、関心をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。 家族信託の8つのメリット 家族信託とは、信頼できる家族に不動産や預貯金などの財産を預けて、指定したとおりに管理処分してもらう契約です。以下でそのメリットをみていきましょう。 柔軟に財産管理できる 高齢になったときの財産管理方法としては、家族信託以外に「後見制度」があります。後見制度を利用する際には「家庭裁判所」による監督を受けなければなりません。後見人が自由に財産の管理処分をできるわけではなく、裁判所の許可がないとできない行為などもあり制約がかかります。また定期的に財産の内容や管理状況について、裁判所へ報告する必要もあります。 家族信託であれば、家庭裁判所の関与はないので受託者が柔軟に対応できる点がメリットです。定期的な報告も不要なので、受託者にかかる事務手続きの負担も軽くなります。 財産を預ける相手を指定できる 本人の認知症が進行してしまった後に第三者に財産管理を任せるには、成年後見制度(法定後見)するしかありません。 そうなったら、家庭裁判所が後見人を指定するので被後見人は自由に財産管理人を選べません。弁護士や司法書士などの第三者が選任され、本人のすべての財産を預けなければならない可能性もあります。 家族信託であれば委託者本人が信頼できる家族を選べるので安心ですし、よりご本人の希望に沿った財産管理を実現できるでしょう。 認知症になっても財産が凍結されない 家族信託契約を利用せずに認知症にかかってしまったら、本人が財産を動かせないので「凍結状態」となってしまう可能性があります。 たとえば不動産の売却もできず預貯金も引き出せないなど。そうなったら本人の生活にも支障が及び、周囲にも迷惑がかかるでしょう。 あらかじめ家族信託を設定しておけば、受託者が適切に管理できるので財産凍結のトラブルは発生しません。 相続争いを防止できる 人が死亡すると基本的に法定相続人が財産を承継し、遺産分割協議を行なう必要があります。その際法定相続人同士の意見が合わず、トラブルになるケースが多いので注意しなければなりません。 あらかじめ家族信託によって死後の財産処分管理方法や最終的な財産帰属先を指定しておけば、相続争いを避けやすくなります。特に遺産に不動産が含まれている場合、管理処分権を1人に集約しておけば共有状態になるトラブルを避けられるメリットもあります。 生前の財産管理から死後の財産処分まで連続した対応が可能 家族信託を利用しない場合、生前の財産管理に関しては後見制度、死後の財産処分や承継については遺言を用いる必要があります。 これらの制度は直接関連性のないものなので、死亡した時点でいったん財産管理体制が分断され、連続した対応ができません。 家族信託であれば生前の財産管理から死後の財産処分引き継ぎまで連続的に対応できるので、スムーズかつ柔軟に対応できます。 2世代以降の財産承継を指定できる 遺言書を利用しても、財産承継方法を指定できるのは自分の次の世代までです。 たとえば「長男に財産を引き継がせる」と遺言した場合でも、長男が誰に遺産を引き継がせるかは長男の意思次第。父親が決めることはできません。 家族信託を利用すると、まずは長男、その次は次男の子ども(孫)など、2世代以降の財産承継方法を指定できます。 委託者が破産しても財産が守られる 家族信託を利用しない場合、本人が破産すると財産は基本的に全て失われます。 一方で、家族信託を利用して預けていた財産については、たとえ本人が破産しても守られることになっています。これを「倒産隔離機能」といいます。 同様に受託者が破産しても信託財産に影響はありません。 さまざまなシーンに対応できる 家族信託の適用場面は非常に多彩です。 たとえば以下のような悩みごとには、すべて家族信託によって解決できる可能性があります。 事業承継 障害のある子どもの生活が心配 子どもがいない夫婦の相続対策 事実婚の夫婦の相続対策 死後に遺されたペットが心配 認知症に対する備え 先祖第第伝わってきた土地を確実に次世代に伝えていきたい 相続や高齢になった後の財産管理についての心配事は家族信託で解決できる可能性が高いので、関心がありましたらぜひご相談ください。 家族信託の5つのデメリット 家族信託には以下のようなデメリットがあります。 身上監護権や取消権がない 「成年後見人」には本人の身上監護権が認められますし、本人が勝手に締結した契約などの取消権もあります。 しかし家族信託の受託者にはこういった権限がありません。認知症の親が不利な契約を締結させられても取り消しができず、本人を十分に保護できない可能性があります。 家族間で意見対立する可能性がある 家族信託を設定するとき、親族間で十分に話し合わないと利害関係人の間で意見対立してしまうケースがあるので注意しましょう。 たとえば家族信託で不動産を委託すると、不動産の名義は受託者へ移転します。その際、受託者以外の推定相続人が不満を持つかもしれません。 1人の子どもを受益者とすれば別の子どもが「不公平」と感じて反対するケースあるでしょう。 最終的な財産帰属先を長男の子ども(孫)にすると、次男や次男の子ども(孫)が納得せずトラブルを起こす可能性もあります。 家族信託契約を利用する際には、親族全員でよく話し合い、納得できる方法で最終的な契約を締結しましょう。 贈与税、相続税がかかる可能性がある 家族信託を設定して財産を受託者へ預けると、その時点で「贈与税」が発生する可能性があります。委託者以外の人を受益者とした場合、受益者へ財産が移転したとみなされるためです。 委託者を受益者とした場合でも、委託者が死亡して受益者の地位が移転すると「相続税」がかかります。 思わぬ税金が発生して困惑しないように、家族信託契約を締結する前には税理士に相談して税額のシミュレーションをしておきましょう。 税務申告の手間がかかる 信託財産から年間3万円以上の収入を得られたら、次年度の1月31日までに「信託計算書・信託計算書合計表」という書類を税務署に提出する必要があります。 また信託財産から不動産所得が発生する場合、確定申告の際に「不動産所得用の明細書」だけではなく「信託財産に関する明細書」という別の書類も作成しなければなりません。 このように、家族信託を利用すると税務申告の手間が増大する可能性があります。 自分で対応するのが難しければ、税理士に依頼しましょう。 専門家に依頼すると費用がかかる 家族信託を利用する場合、受託者は家族なので受託者へ費用を払う必要はないケースが多数です。 一方で、家族信託の契約を設定するために専門家に依頼する必要はあるでしょう。家族信託の法的スキームは複雑であり、素人ではうまく契約書の作成や登記などに対応できないケースが多いためです。 専門家に依頼すると、信託財産の価額に応じた報酬が発生します。また公正証書を作成する費用や登記費用なども必要になる可能性があります。 家族信託を利用する際には、あらかじめ何にどの程度の費用がかかるのかシミュレーションしておくべきといえるでしょう。 家族信託のメリットもデメリットも知り尽くした専門家へご相談を 家族信託にはメリットとデメリットがありますが、うまく利用すればメリットを大きく活かすことが可能です。ただし十分にメリット活かすには、家族信託に長けた専門家を選定する必要があるでしょう。 当事務所は相模原・町田の地域を中心に相続コンシェルジュとして活動を続けてきた実績がございます。家族信託に関心のある方はお気軽にご相談ください。
最終更新日 2022.05.30投稿日 2022.05.06
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家族信託
不動産の「共有トラブル」を防ぐ家族信託~信託契約による相続対策~
不動産の「共有トラブル」を防ぐ家族信託~信託契約による相続対策~ 複数の相続人が不動産を相続すると、不動産が「共有」になってしまうケースがよくあります。 共有者同士で意見が合わず、大きなトラブルが発生するケースも少なくありません。 そんなとき、被相続人の生前に家族信託を設定しておくと共有トラブルを防止しやすくなります。 今回は将来の相続に備えて家族信託を利用し、共有不動産のトラブルを避ける方法を専門家が解説します。 不動産を所有していて相続対策に関心をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。 共有不動産はトラブルが発生しやすい 不動産を複数の人が共有すると、非常にトラブルが発生しやすくなっています。以下でその理由やもめるパターンをみてみましょう。 不動産の共有とは 共有とは、複数の人が1つの財産を共同で所有する状態をいいます。それぞれの共有者には「共有持分」という割合的な所有権が認められます。 たとえば兄弟3人で不動産を共有する場合、それぞれの共有持分が3分の1ずつなどとなります。共有持分割合は基本的に全部足すと1になります。 共有不動産でトラブルが多い理由 不動産の活用や処分に他の共有者の同意が必要 不動産を共有する場合、それぞれの共有持分権者には完全な所有権が認められません。不動産の売却やリフォーム、建替えや抵当権の設定など、各場面で他の共有者の同意が必要となります。共有者同士で意見が合わない場合、不動産の活用も売却も困難となって最終的に放置されるケースも多々あります。 共有不動産の分割も可能ですが、そのためには「共有物分割請求」をしなければなりません。話し合いで解決できなければ、裁判所での共有物分割訴訟が必要になる可能性もあります。 固定資産税の納付方法や清算でもめる 共有不動産にも固定資産税がかかるので、共有者は毎年固定資産税を払わねばなりません。 一般的には代表者を定めてまとめ払いを行い、後に他の共有者との間で清算するケースが多数です。 しかし共有者間のコミュニケーションがうまくいっていなければ、清算もスムーズに進みにくいでしょう。誰か1人が支払いをしたまま他の共有者から清算金を受け取れず、不満を抱えてトラブルになる可能性があります。 共有者の死亡により不動産の持ち分が細分化される 共有者が死亡して相続が発生すると、もともと割合的な権利であった共有持分がさらに細分化されてしまいます。 何人もの共有者がどんどん死亡して次の世代に共有持分が相続されると、もはや誰が本当の権利者かわからない状況になってしまうでしょう。 不動産を共有状態で放置すると、次の世代へも迷惑をかけてしまう可能性が高くなってしまいます。 遺産相続で不動産が共有になりやすいパターンや理由 遺産相続が発生すると、不動産が「相続人同士の共有状態」となるケースが少なくなりません。 どういった状況であれば共有になってしまうのか、なぜ共有になるケースが多いのか、みていきましょう。 遺産分割協議がまとまらない 相続が発生して複数の相続人がいたら「遺産分割協議」を行って遺産分割方法を決める必要があります。遺産分割協議を成立させるには、相続人全員が参加し、意見が一致しなければなりません。1人でも非協力的な相続人がいたり、他の相続人の意見に反対する相続人がいたりすると遺産分割協議は成立しないのです。 意見が対立してしまうと遺産分割協議を進めるのが難しくなるので、協議が打ち切られて放置されるケースが少なくありません。遺産分割協議未了の状態だと、不動産は相続人全員の「共有状態」のままになります。それぞれの法定相続人の持分割合は、法定相続分に従います。 このように、遺産分割協議がまとまらないために不動産が共有状態になってしまうケースは少なくありません。 遺産分割協議で「全員の共有」にする もう1つのパターンは、遺産分割協議で全員が合意して「不動産を共有状態にする」ケースです。 誰か1人が不動産を相続すると不公平になるので、「とりあえず全員の共有状態にしよう」という内容で協議がまとまります。すると、不動産は共有状態になり全員が共同で管理していく必要があります。このように、遺産分割協議の結果、あえて「共有状態」を選択するケースも珍しくありません。 なお遺産分割協議で共有にする場合、各相続人の持分割合は協議によって自由に定められます。ただ通常は、法定相続分に従うケースが多いでしょう。 家族信託で不動産の共有トラブルを防止する方法 被相続人が不動産を所有している場合、何の対策もしなかったら相続開始後に不動産が共有状態となってトラブルのもとになる可能性が高くなります。 そんなとき、家族信託を利用すれば共有トラブルを予防できるので、その方法をみてみましょう。 家族信託とは 家族信託とは、信頼できる家族に財産を預けて管理してもらう「信託契約」です。たとえば子どもに不動産を預けて親自身のために管理してもらったりできます。 財産を預ける人を「委託者」、財産を預かる人を「受託者」、財産管理によって利益を受ける人を「受益者」といいます。委託者と受益者は同じ人でもかまいませんし、異なる人としてもかまいません。 家族信託は委託者の死後にも効力を持続させられるので、死後の遺産相続対策にもよく利用されています。 受託者を決めて相続人全員のために管理する 家族信託で共有不動産のトラブルを防ぐには、以下のような方法で家族信託を設定する方法が有効です。 委託者は親 受託者は子どもなどの親族 受益者は、生前は親本人、死後は相続人全員 信託財産は不動産と預金 上記のように設定すると、受託者となった子どもが、親の生前は親自身のために不動産を管理します。親が生きている間は親自身が発生する賃料等を受け取れます。 一方、親が死亡すると受益権は法定相続人へ移ります。そうすれば、法定相続分が法定相続分に従って賃料等を受け取れるのでトラブルになりません。 はじめから受託者や管理方法が決まっているので、相続人同士で物件の活用方法を決める必要もありません。 最終的に不動産の処分が必要なときにも受託者の判断によって売却できますし、売却代金を受益者全員に分配することも可能です。 固定資産税や管理費等の費用は受託者が管理財産の中から支払うので、共有者同士で納税の代表者を定めたり、代表者がまとめ払いして清算したりする必要もありません。 このように、共有不動産を信託しておくと、相続開始後の共有トラブルにつながりにくくなります。不動産を所有していて相続人が複数おられる方は、ぜひ生前に家族信託を設定しておきましょう。 共有不動産に家族信託を設定するための流れ 専門家に相談する 共有不動産をお持ちの方が家族信託を利用したい場合、まずは専門家に相談しましょう。 信託契約は設定方法も複雑で信託登記も必要なので、ご自身だけで対応するのは困難だからです。当事務所でも積極的に家族信託の支援を行っていますので、お気軽にご連絡ください。 信託契約を締結する 次に専門家の支援を受けて信託契約を締結しましょう。 誰を受託者とするのか、どの不動産や預金を信託するのかなど決める必要があります。 また信託契約書の公正証書化は必須ではありませんが、より効果的にトラブルを予防するには公正証書にしておくようお勧めします。その手続きについても司法書士がサポートいたします。 信託登記を行う 不動産を信託する場合には信託登記をしなければなりません。司法書士に任せていれば登記までスムーズに完了できるのでご安心ください。 不動産の家族信託は相模原・町田の相続へお任せください 不動産を所有しているなら、早いうちに相続トラブル対策を行っておく必要があります。当事務所は相模原や町田エリアを中心に家族信託や遺産相続の支援に積極的に取り組んでまいりました。自宅や収益物件などをお持ちで複数の相続人がいる状況であれば、一度お気軽にご相談ください。
最終更新日 2022.05.30投稿日 2022.05.06